アルコールの酔いは、ヨハン・トールの心を蝕んでいた。酔いに任せて部屋の扉を開けると、そこには真っ暗なライフルが6本、いや、7本だろうか、彼の方に真っ直ぐ向けられている。思わず足を止めてしまった。自分の机だろう物の後ろに誰かが座っているのが見える、酔いが一気に覚めていった。
「ミアか?」
そう呟いた。いや、そんなはずがない。まさか。彼女がそんなことをするはずがない。
「どうして?どうしてこんなことを」
回答は無かった。さっき自分が入ってきた扉から、続けて数名の大臣たちが現れミアの横についた。ペートゥルソンにハルビンハンセン、みんな私を裏切ったのか?
『ヨハン…本国はアイスランドの王国への昇格を正式に認め、またあなたの解任を要請しました。アイスランド議会はこれを承認しています。後はあなたの署名のみ』
「最初から嵌めるつもりだったのか?これまでも全部、昔は君はこんな人間では」
ミアが机の上に置かれた万年筆をヨハンに手渡そうとする。彼はそれを受け取らず胸ポケットから別のペンを取り出し署名を始めた。手を見れば怒りが湧いているのがわかる。
「本国は何を考えている。君たちは何が目的だ。私からアイスランドを奪って、一体何をしようとしているのだね」
『この国の平穏と秩序を維持するため…あなたは不適格だった。急進主義を我々は求めていない』
「いつからそんな人間になったのだ。まるで、犬のように尻尾を振る人間に」
『警官隊。アイスランドの英雄に相応しい退陣を』
「後任はペートゥルソンか?くそったれ」
「私は昔から何も変わっていない。変わったのは、おかしいのは君の方だ。私は故郷のために尽くしただけなのだ。この売国奴め。信用するべきじゃ無かった。自分たちの手綱を握るクソのような飼い主に付き従う、香港人の裏切り者め」
銃を突きつけられたまま、彼は手錠をかけられ床に押さえつけられる。彼はミアに罵詈雑言を浴びせたが、彼女は目を逸らし、書類に目を通し始めた。
彼の足と手が殴られると抱えられ部屋の外へ運び出される。議会はペートゥルソン新首相の誕生を祝福している、計画は万事順調だ。だが問題は山積みだ。やるべきことはまだたくさんある。
まずは家の掃除から始めなければ。
・ペートゥルソン
アイスランド副首相
・ハルビンハンセン
アイスランド財務大臣