…彼が持っていた短機関銃の中に装填されていた
30発全てのフルメタル・ジャケット弾が吐き出されるまで、
ものの10秒もかからなかった。
弾丸が真っ向からエンジンを豆腐のようにぶち抜き、
内部にいた人間を片っ端から細かく刻んでいく。
コントロールを失った乗用車が彼の目の前を通り過ぎ、
電柱に激突して爆発炎上したところで一言だけ呟いた。
「徹甲弾なんて使うべきじゃなかったな、チクショウ…」
一方その頃、サミュエルと倉田は駐在所まであと少しのところまで迫っていた。
では、視点を再び彼女に戻すことにしよう。
「駐在所まであと少しだ。
ま、走って3分ぐらいだな」
「ようやく安全な場所に行ける…」
また路地裏を歩きながら、サミュエルさんはそう言った。
既に疲れ切ってはいたが、
それでも目の前にゴールがあるので
頑張ってひたすら進み続ける。
「駐在所の周りは比較的治安がいいし、何より綺麗だ。
ようやくあんたにお似合いの場所につけるぜ」
これでようやく終わる…
家に帰ったら、ゆっくり風呂に浸かって休もう。
「おい、そこの二人組! 止まって両手を上げろ!」
急に大声で怒鳴られて、思わず飛び上がった。
声のした方向を見ると、4人の男たちが立っている。
風貌を見る限り、さっきまで追いかけてきていた
二人組の仲間のように見えるけど…
「さあ、怪我したくないなら
とっととその娘さんをこっちに引き渡せ!
こっちも二人殺られたままじゃ面子が立たないんだよ!」
「ああ、畜生…
おい嬢ちゃん、俺の言う事をよく聞けよ」
「…?」
「ここでコイツらを何とかするから、
お前は駐在所まで転がり込め。
安心しろ、まっすぐ行けばたどり着くさ」
そう小声でサミュエルさんが言った。
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