榊の前に立っている男たちはずいぶん前からギャーギャーと喚いていて、いい加減腹が立っている。ルコラにいる名前を覚える価値もないような部下や、関連会社か何かの会社の社長などだ。榊の広州の執務室に来るために、かなり速い方から来た人もいた。彼らは、自分をうまく自己紹介し、よく準備された発表をした。卑屈にお辞儀をしたり、泣き言を言ったり。榊の改革の急進性を指摘する声や、榊の統治により広東に訪れるであろう『摩擦』や『燃え尽き症保群』に関する懸念。榊の構想に敬意を表しながら、彼らはこれらを言った。
「もう結構」
男たちの1人、佐藤が馬鹿な従兄弟の御涙頂戴話を捲し立てていたとき、榊はそう言った。
「佐藤くん。広州に来るのは大変だっただろう?」
『い、いえ、そんなことはありません、行政長官!』
佐藤が榊を期待を込めた目で見た。
「それはよかった。ただでさえ既に苦労している君が、ここに来るためにさらに苦労をしているとしたら今すぐに日本へ帰ったほうがいい。それに加えて、佐藤君、ルコラの水準を満たすために時間とエネルギーと矜持にではなく、凡庸であるその言い訳に力を注ぐことに決めたのなら、それも今すぐやめろ。そして佐藤君、君の従兄弟は精神と肉体、どっちの障がい者なんだ?」
『な、なんですって』
「障がい者だと言ったんだ!」
榊の挙がテーブルを叩き、皆を驚かせた。
「基本的な仕事も満足にできないほど発達が遅れているんだろう!過剰なおしゃべりをすることなく的確な指示を出して満足のいく結果を得ることや、会社の基本的な指示や要求に従うことは、本当に至難の業か?お前の低脳な従兄弟の凡庸な努力は、人間の精神の勝利と呼べるのか?」
彼の声は今や、唸り声に変化していた。
「脳も神経も何時間も限界まで酷使してもなお、そのようなクソみたいな結果を生み出すことしかできないのか?広東国にはそのような者の為にあるわけではない。日本に帰って生活保護でも受給する方が有意義だとは思わなかったのか?さぁ、君のその小さな脳で意味のない言い訳を喚き散らす前に、俺の執務室からさっさと出て行け!」
ルコラはこれからも卓越さを追求し続ける。