保守党穏健派、オリバー・モードリングが率いるこの派閥は、この数十年間もの間、一度も政権を握ったことがない。モードリングの夢はシンプルなものだ。それはこの国を世界で最も自由な国家へ昇格させ、貧困と貪欲をこの世から排除すること。
彼の目の前には今自由民主党のリック・ガーベイがいる。この自由民主党本部にモードリングのような保守党員がいるのは本来場違いである。彼は交渉しに来ていた。
「ガーベイ、君への最後の願いだ」
「君の望むポストをやる。君のやりたい政策をすることができる。代わりに私と協力してくれ」
「あのテイラーが崩れ落ちる時に、私は彼女の犯した間違いを修正する。そのためには君の力が必要なんだ、ガーベイ。その手腕と思想と力が」
モードリングが酒を飲んでいないにも関わらずこのように感情的になるのをガーベイは初めて見た。財務大臣という夢をおわれた男はまたその夢を諦めてはいなかったが、彼はいつのまにか手段を選ばなくなっていた。この関係が公になれば彼の政治生命は終了する。だがそれでも彼は選択した。
『これが明らかになった時のリスクをお考えで?モードリング』
「あの党を改革できる者はもういない。この国を自由にするためには内側から変えていくしかないんだ。そのために消えるなら、私は酒を飲んで堂々と去ってやる」
一瞬、モードリングは彼が頷くかで緊張したが、彼が息を呑む間もなく、ガーベイは彼の手を掴み、硬く握手した。
「ありがとう。ガーベイ」
モードリングの脳内に一瞬だけ、迷いの感情が現れたが、彼はそれをすぐ除外した。大丈夫、後は進むだけ。この国を自由にするために、テイラーからこの国を解放するために、大英帝国の妄想を払拭するために前進するのみだ。
賢者の思考か、狂人の妄想か。
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