とりゆっけ
補助龍 6641dc4fb6
2025/08/22 (金) 13:00:37
卒業式にふさわしい快晴のキャンバスだった。睎は人ごみの端に立ち、卒業生たちを眺めていた。いつか自分もそうなるのだ。中庭のすべての角にはカメラがずらりと並び、他でもない井深均の言葉に静かに耳を傾けている。
井深は会場の前方にある一段高い台に立ち、卒業生への期待を口にした。
「広東国の若者たちは」
「この国の将来を背負って立つ存在です。そして嬉しいことに、今回の卒業生の3分の1が華人です。時代の流れです!」
これにはいろいろな反応があったが、井深が話している間に敢えて言葉を発する者はいなかった。
「実は」
井深は続けた。
「私が広東国の将末に期待することのすべてを体現している一人の学生を紹介したいのです。今日の卒業生ではありませんが、彼の活躍が目立っています。彼の名は……李睎君です」
井深が振り返り、睎を直視した。すべての頭とカメラがその若者の方に向いていた。全国が彼に注目しているのだ。
井深がステージから降りて自分の方へはきたとき、睎は思わず顔をしかめた。冗説だろう?今? みんなの前で?その場で穴に入りたくなったが、井深に手を差し伸べられると、晞はとっさにそれに応えてしまった。
「君は同級生と広東国市民の模範となる学生だ」
井深はにこり笑って言った。
「私は今、あなたのキャリアに強い関心を寄せています」
拍手唱来に囲まれた睎は、ただただ笑顔でうなずき、かつて抱えていた不安や恐れはどこかへ行ってしまった。自分の手で勝ち取ったスポットライトを、恥ずかしかるべき理由は何もない。いいや。彼は名誉を与えられるべく与えられたのだ。この瞬間に雷に打たれても、彼は幸福な人間として死ねるだろう。
これもすべて目の前に立っている男のおかげなのだ。
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