かとかの記憶

ル=グウィン 再読 / 39

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katka_yg 2025/06/06 (金) 10:50:00 修正

 最近のファンタジーもののベストセラー『かもめのジョナサン』は、真面目な本、間違いなく誠実な本である。と同時に、知的、倫理的、情緒的にはとるに足らない駄作である。作者はものごとを徹底的に考え抜いていない。彼は、この国でわれわれが得意とするたぐいの、見事に包装された〝お手軽な答え〟のひとつを押しつけようとしているにすぎない。彼は、あなたが自分で非常に速く飛べると思うのなら、そう、速く飛べるのですよ、と言っているだけである。にっこり笑いさえすれば万事うまくいく、世界中が幸せになる。あなたが微笑をうかべれば、カンボジアで壊疽で死にかけている男も、バングラディシュで飢える四歳の子も、隣に住むガンを病む女も、みなずっと幸せな気分になり、彼らのほうでもにっこりするだろう、というわけだ。

『夜の言葉』(1979)より。ル・グインは『かもめのジョナサン』を挙げるたびに叩いているみたい。この文章のあとはザミャーチンの『われら』に続く。

ここで連想しているのは魔法の使い方について。

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