かとかの記憶

リーンの翼 / 194

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katka_yg 2025/09/24 (水) 22:37:33 修正 >> 192

幻想世界の生物(人間以外の)の起源のようなことを考え始めるとすぐに困難に突き当たるのは目に見えているが、人の意思によって成っているような世界なら人類以前にどうだったか等……。それも、何百万年とは遡れるような気はしないにもかかわらず、あたかもこの世界で永年進化してきたような、歴史ありげな動植物、魚がいて、菌もいる。

いっそ強獣くらい超自然・不自然に見えるものなら、「地上界の人々の太古から抱く恐怖のイメージ」のように説明つくかもしれない。バイストン・ウェルの獣や樹木や花々も、生きているように見えてはいても、いずれも人の思い描く幻のような産物かとも思う。

幻想世界の史的転回

コモン人には歴史学がない。コモン界で人々が古くからどのように暮らしていたか、昔にどんな事件があったかについて「伝承」はあるが、それらの人の営みが時に沿ってどのように進展(あるいは停滞)しているか、その意味を訊ねることをしていない。ただ、コモンの営みは何千年もさほど大きくは変わらずだったと伝えられている。ごく最近になり、ゴゾ・ドウのようなある種の歴史理解をもつ人物、故事の記録上にみられる事象にはある法則性があって強大な勢力を誇った文明が崩壊するときはこうだとか、英雄と呼ばれる人々が登場する時代にはこうだ、といったある一定の観点から時間を見つめ直す、解釈する思想を備えた人が現れ、その史観にもとづく支配権の再編、覇権を求め始めた。

バイストン・ウェルの地層を掘って古生物の化石が見つかるようには思いにくい。また一方、地上界にとっても、……地上には地上人のもともと住む地球があり、太陽系があり、銀河があり……といった宇宙観が、バイストン・ウェルと無縁にどれくらい実在しているのか――のような疑問には、バイストン・ウェル物語のうちでは、シリーズを通して地上の実在性が問われることは少ない。けれど、前のような「地上の歴史へのガロウ・ランの介入」が言われ始めるなら、この先は地上も含めて一つながりの「語り」の内にする、と言わんとはしていると思う。それを読者や、作品理解の上にも、今も全然そういう取り上げ方はされない、とは思う。

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