かとかの記憶

リーンの翼 / 218

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「30 血の騒ぎ」(旧)
「19 スィーウィドーの狭間」(新)更につづき

場面は前線のスィーウィドーから現在の後方、本拠地であるドラバロ。アマルガンとリンレイのいるところに戻る。

 風がないせいである。
 人馬の雑踏がかきたてる砂塵が舞い上り、ふき払われることがない。
 そのためにドラバロの砦はかすんで見えた。(旧)

 海からの風もまったくはいらなければ、人馬の雑踏がかきたてた砂塵が、舞いあがったままの形でただようのは、盆地のような地形だからでもあろう。
 人びとはそれを押しのけるようにして行き来するしかなく、梢越しにのぞめるドラバロの城砦もかすんでいた。(新)

このようなリライトは文字数を詰めるような意識は全然ない。「風がない」理由に盆地のような地形と、「梢越しに」ということで周辺にそれなりの植生のあることの描写を書き込んでいる。

こう連日のようにリーンの新旧を較べ読んでいると、この「完全版」に当たっての書き込みは著者にとっても相当に熱心にされているように伝わる一方、それでも章によっては幾分か濃淡のリズムは感じる。スィーウィドーからこちらの完全版のテンションが高い。読者が疲れているのかもしれない。

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    katka_yg 2025/10/02 (木) 23:44:54 修正 >> 218

     リンレイの調達した財宝がいつまでもあるというものでもない。軍事物資を調達する官僚機構の整備も急がねばならなかった。
     が、それには、機構の問題だけではなく、時も必要とされた。
     穀物は、四季を経て人の刈りとりを待つものであるからだ。(旧)

     リンレイの調達した財宝がつかえるあいだに、資産運用の基盤をととのえ、軍事、生活両面の物資の調達、官僚の整備も急がねばならないのだが、そもそも穀物や魚介類、畜産は一年をとおして人の刈りとりを待つものだから、季節とも相談しなければならない。(新)

    軍事だけでなく軍事と生活の両面、穀物だけでなく魚介も畜産もという。とくに「異世界経済のリアリティ」については完全版の端々に新たに熱意を奮っている印象がある。憶えているところはゼラーナ号での船上生活のあらましとか……。それはこの新旧の間、90年代や00年代までの和製ファンタジーの経過などは、思いきり、異世界経済・民衆史観のような史観・世界観にどっっぷりで流行したので、旧版のそれも時代遅れになってしまって、まだまだ書き足りていなかったような気持ちは湧くのだろうと思う。