かとかの記憶

リーンの翼 / 279

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「41 ミラヤマ」(旧)
「26 ミラヤマ」(新)

「リンレイこそ聖戦士ではないか?」
との見識を披瀝するについて、旧版ではジーニアス(ジニアス)の達見を評価しながら、そこに真の洞察力はない、彼は所詮多少苦労をしてきた程度の元貴族にすぎない、凡俗にすぎないと断定している。
完全版ではこの段階でそこまでいわず、貴族的な口のききかたが鼻につくとリンレイやガッザ(ガザエル)に反感を抱かれても頓着しない鷹揚な人物、という言い方にとどめている。

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  • 280
    katka_yg 2025/11/18 (火) 10:33:44 修正 >> 279

    アマルガン・リンレイの海陸からの圧倒的な戦力でミラヤマは陥落した――と言ってから戦闘が始まる。

    まず戦端を開くのは艦隊からの城壁への艦砲射撃。旧版では、さしたる効果は語られておらず

     鉄の弾でも、穴のひとつぐらいは開けていてくれた。
     それを足場にして駆け上り、防壁を突破するのだ。

    と書くだけだったが、完全版では迫水の日本海軍の戦術論を入れて、五〇隻からなる艦隊から大々的に一斉砲撃を敢行、コモン界では未知の艦砲で市壁を突き崩して突入孔を開くスペクタクルに語り変え。

  • 281

    〝直真影流の法定の静寂と動が、おのれを生かし、外敵を殺す技であると教えていたはずだ〟
     迫水の意識が語った。
     そして、剣を抜いた。
     シャラッと剣が鞘から離れる音は乾いていた。銃を腰のベルトの間に収める。
     迫水は、薬缶をかけてある炉を跨ぐと、ドアに寄って、押し開いた。
     追水が目につけているのは、一人の敵だけである。(旧)

    〝直真影流の法定の静寂と動が、己を生かし、外敵を殺す技である!〟
     その言葉は呪文である。鞘から刀身が抜けたのは、血糊をきちんと拭いていたからだ。
     拳銃をベルトにおさめて、三和土を掘ってつくってある炉の薬缶をまたぐと、木戸を押しひらいて、営門を背に剣をふるう武者に狙いをつける。(新)

    敵の将を射てばあとは雑兵の群れである、と続くまで同様。アクション内容は同じはずだがこうまで書き変えて字数は大差ないはずだ。

    282

    上を下に書き変える意図は、言葉と言葉を見比べて「ははあ……なるほど」と考えれば分からなくはないと思う。また、上を下に書き変えなければならない理由は、文字を見比べるだけで依然としてはっきりわからないと思う。

    富野文の新旧の「調子」についてはあらためて語ることができないものかな。旧来富野ファンでも、著者の上下三十年くらいの間の御文章を「一貫して変わらないもの」という前提で小説やエッセイを語っているものだ。

    283
    katka_yg 2025/11/18 (火) 11:14:00 修正 >> 281

    たくさん作品を読んでいるとある時機を経てこういう節回しに変わっていくという変化は漠然と見えるものだが、作者にとっては蓄積した進展であっても、読者のうちには「古いほうが好き」という感想を許さないものでもない、というのが文学研究の面白いところでもある。

    作者の内的な経緯と、他からの評価も必ずしも一致してはないが、その変遷は「ある」ということをまず指摘できる。文学研究は「良い書き方」「すぐれた書き方」の価値観を語ること、ではないらしい。文学者でなければそこ読み分けてくれないので、集中してデータを蒐める人が専門的にする。

    小説の創作教室やアニメ専門学校の脚本コースではなくて、人文科学という話ね。わたしの文学観についてはまた今度べつにしよう。