Calling
この話の冒頭からリルーンが無邪気に鳩を呼び寄せているすべは「the Calling」と書いてあって、魔法の伝統的な一分類でもあるだろうけど、わたしは最近読んでいたこともあってマキリップの『妖女サイベルの呼び声』(1974)を思い出す。
「呼び声」とか「呼び出しの術」(召喚)のテーマには、やはりテレパシー的なもので言葉を超え、空間を超えて届き、呼びかける彼女の求めに何があっても駆けつけるというカリスマ的魅力であるとともに、呼び出される相手の意思を時には無視し、虐げもする、洗脳的な面もあった。
リーとマキリップみたいな同時期の作家の間に直接どんな関係があるかはわたしは今とくに知らないが、1978年頃の同ジャンルの読者だったら、「コーリングもの」として説明なしにすぐに分かっただろう。そのジャンルの当時流行は一度途切れると20年後くらいにはわりと分からなくなっていることもあり、そうした事情は後から補われてあるといいね。
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「呼び出しの術」のストーリー型の起源について等はまた、詳しくはないし、漠然と尋ねれば幾らでも幅の広がることだろう。ひとつには、「片思いの恋人を自分の元に引き寄せる」という「恋の魔術」としては、このまえ「黄金のろば」にもあったがそんな魔術は人類の歴史のかぎり、遡れば有史以前からもあっただろうと想像はできる。
「死者の霊を呼び出すこと」については、わたしはいつも『アエネーイス』を最初に思い出す例だが、そこでもすでに呼び出される霊は自分の意思に反して、かなり辛そうに現世に姿を見せ、術者の問いにも苦しげに答えていたものだった。ネクロマンシーについては別途またする。
そうした、不承不承の相手を強制的に呼び出し、霊的に支配もすることに対しての反面、後ろめたさの気分は古代の作品からでも読み取れる。コーリングで呼び出すことには極度に昂奮している女の子に対して呼び出された男の子の対応が塩、のような気持ちも踏まえておきたい。