アレクの得た<答え>
冒険家・動物学者のアレクのテントに夜に訪ねてくる者がいた。アレクが寝ていると、テントのジッパーのところをとんとんと叩く音がして、アレク、アレク、開けて頂戴。……開けていいのかしら。と声が聞こえた。
半分寝ぼけでアレクが応じると、客はジッパーをそろそろと引き開け、白い衣裳と長い髪が入口に引っかかるのを難しそうにテントに入ってきた。はっきりと顔を合わせると、ランプの明かりの下でも輝くように美しい少女だった。やや上目遣いに見ながら、膝を揃えて座る一々の仕草にもどこか、稚い面影があり、アレクは十年前のことを思い出した。
当時、小学生だったアレクは進路に悩み、夏休みを利用して自分探しの旅に出た。LAストリートで捕まえた草虫を始めに、ポイズンバタフライ、ヒップホッパー、電気ねずみ、インドラ、ドルバン甲虫、朱雀、青龍……等々、数々のモンスターを仲間にして名を挙げ、獣使いアレクとして闘いの塔を駆け昇っていった。
各階の対戦者は全宇宙から集まったスペシャリスト達で、容赦なく熾烈な戦いが待っていたが、アレクは決して負けることも挫けることもなく勝ち進んだ。塔最上階では、白鳳十騎士の第十番、「従う者」ヘルメティカと戦った。ヘルメティカは見た目は六歳の幼女だが、おそらく千年は昔からその姿をしている。恐るべき魔力で闘いの塔を制圧しており、塔の達する銀河の最深淵より声なきテレパシーの声、人々の
アレクの切り札モンスター達はヘルメティカに難なく無力化されてしまい、ヘルメティカの方は細腕な小娘なので、戦いはじきに膠着状態に陥り、二人は部屋にあるクッションや枕、ぬいぐるみを投げ合い、服を引っ張りあってもつれ合った。アレクがくたくたになって倒れ込むと、相手も隣で、絨毯に仰向けになって薄い胸を上下させていた。アレク、アレク……少女は熱っぽくくり返し、このことは誰にも明かしてはいけないわ、あたし達だけの秘密にして……といった。
アレクは、言われるまでもなく秘密は守る性格だったから、戦いを終えると、<答え>を得て塔を降りていった。アレクが<答え>を得たことはすぐに噂となって銀河の隅々にまで広まったが、その<答え>が一体どんなことだったのかは、誰にもわからないのだった。
アレクはそれから銀河の星々を訪ね歩き、各星系に人類文明の興隆するによって、一方で滅びていった原住生命達の痕跡を発掘して記録する、銀河古生物学とも「死者の代言」ともいわれる仕事についた。この道では獣使いとしての、あの夏休みの経験が役に立った。テントに訪ねてきた少女は翌朝には、自分もサファリ・ルックに着替えており、アレクのその日の仕事に一緒について歩いた。夜にはまた同じテントで、お互いのことを語りあって過ごした。はじめは堅く、ぎこちなかった少女の表情も、互いに触れ合い、交じり合うほどに、その美しさも蕾が綻びるように開花していった。
冒険者のアレクが可愛い助手を得たことはすぐに宇宙の噂に昇ったが、彼女はまたしばらくするとアレクのもとを立ち去っていった。深宇宙の寂しさに耐えられなくなったらまた訪ねてくるとも、訪ねてきてほしいと約束したともいい、また他の説では、その後二人は再び会うことはなかったともいう。本当のことは互いの間だけで秘密にしているので、きっとわからない。
ヘルメティカの答え
24階の対戦者が従う者ヘルメティカで、『おいで……』という以外語ることも少なく、これが結局なんだったのかはわからない。
テキストではわからないヘルメティカの行動は、一応の最終戦になっているけど戦闘が妙に緊迫感がなく、Lv1制限だから被ダメージも少なくて死ぬ心配が少ないうえに、無駄行動をいくつもしていてあまり熱心に戦わない。
最後に『ありがとう…』といってヘルメティカは消え、アレクは<答え>を得る。ヘルメティカがラストに出てくるのはミサ2のストーリーのラストをなぞっているとしても、アレクは小友ではないし、ヘルメティカはアレクに何の用があったのかも言わない。アレクには、最初に求めた問いの<答え>として、それで伝わったらしい。
これは雪女とか鶴女房とかの話の型で、宇宙時代の民も形を変えて語り続けるだろうと思えるもの。わたしは、前回に上げた「メロウ」の続きで、妖精の妻が破局に至るとくに理由はなくても帰っていくという物語りに興味がある。