法介のオリジナル小説です。
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法介
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Web小説『Wild-Bison』第一部
Vol.1 ロン・スミス
https://wild-bison.blog.jp/
Vol.2 ケイク・アート
https://wild-bison-2.blog.jp/archives/cat_379628.html
Vol.3 マリー・ガーランド
https://wild-bison-3.blog.jp/archives/cat_376383.html
Vol.4 ブロードウェイの攻防
https://wild-bison-4.blog.jp/archives/cat_376833.html
Vol.5 ニーナ・クイーン
https://wild-bison-5.blog.jp/archives/cat_380719.html
↓のVol.1の【File No.1-2】のロンとバイソンの場面を声劇調風に台本を起こしてみようかと思う。
https://wild-bison.blog.jp/archives/19471259.html
シーン1 工房・朝
(落ち着いた声で)
「ロンとは昔、ニューヨークの無法地帯“ヘルズ・キッチン”で出会った。
ワルの匂いを漂わせていたあいつが、まさかそういう機関の人間だったとは……。
後で知って、ずいぶん驚いたものだ。」
(少し間をあけて)
「その日も、朝のコーヒーを楽しんでいたときだった。
工房の外から――聞き慣れたバイクの音が近づいてきた。」
(効果音風に低めの声で)
「ドドドド……」
(ハキハキと)
ロン:「よう、おっさん! まだ生きてるかぁ~!」
(強めに)
「私は仕上がったばかりの“INSIST・カイザー”を掴み、奴に向かって――6発ぶっ放した!」
(効果音を入れるように)
「パン! パン! パン! パン! パン! パン!」
(間を置き、ニヤリとした声で)
ロン:「で、それから?」
(落ち着いた声で)
「私はカップをテーブルに置き、右手の銃をブレイク。
シリンダーを外し、スペアと交換する。」
(やや楽しそうに)
ロン:「いいねぇ~♪ それだ! 俺が求めていたアクションだ!」
(渋く)
バイソン:「片手ワンアクションでブレイクできるように仕上げてやったぜ。」
ロン:「すっげぇ……! 完璧だぜ。さすがおっさん!」
(軽く受け流すように)
バイソン:「おだてても、麦茶しか出せんぞ。」
ロン:「いや、こぶ茶で十分だ。……実はもう一つ、頼みたいことがあってな。」
(きっぱり)
バイソン:「お前の頼みとあっちゃあ、断るしかないな。」
ロン:「今使ってる“カスタム・リボルト”なんだが~」
バイソン:「リボルトがどうかした?」
ロン:「どうってことじゃねぇ。ただ、いいアイデアを思いついたんだ。」
バイソン:「……そうか。それはお前の心に、大事にしまっとけ。」
ロン:「聞きたくねぇのか? すげぇいいことなんだぜ。残念だなぁ。」
(落ち着いた声でナレーション)
「それから数時間、車とバイクの話をして、銃の話は遠ざけた。」
ロン:「今日は面白いDVDを持ってきたんだ。一緒に見ようぜ。」
(間をおいて、タイトルを強調して読む)
「『バック・トゥ・ザ・フューチャーⅢ』」
(ナレーション)
「二人でコーヒーを飲みながら鑑賞していると――映画の中に、面白い銃が登場した。」
(少し間を取り、声を低めに)
「私は思わず、目の色を変えた。」
(ロン、いたずらっぽく)
ロン:「リボルトを……あんな風にしてくれ^^」
(余韻を残して沈黙)
「リボルト・カイザー」ロン・スミスバージョン(下)マックス・デニーロモデル(上)
ロン・スミス編のVol.1の【File No.1-5】 大脱出(後編)を
ツイキャスで朗読してみよう。
~シーン:大脱出(後編)~
ロンのバイクの車輪は突っ込んで来た勢いで
強引に溝に嵌り込んでいて容易にそれが外れる事は無い。
ハーレーのV型2気筒の大きなボア・ストロークが
エンジンにず太いトルクを生み出し、
ロンを乗せた車体を垂直方向に力強く押し上げて行く。
地下に作られたこの基地は地上には一階部しか姿を現しておらず、
その地上1階がエレベーターの到着地点になる。
その広い1階エレベーター・ホールには
30名程の武器を構えた兵士達が昇ってくるロンを仕留めるべく
銃口を一点に集中して迎え撃つ。
「奴が出てきたら一斉射撃だ!」
指揮官らしき人物が兵士全員に届きわたる大きな声で指示を出す。
しかし・・・
どうやって出てくるのだろう
照準をそこに合わせて待っているそれぞれの兵士達の脳裏に
同じ疑問がよぎる。
一方ロンの頭の中では、、
Van Halen の『 I Can’t Stop Loving You』
がパンチの効いたリズムで
脳ミソを心地よく刺激する。
何かを楽しんでいる子供のようなニヤケ顔で
再びスロットルをロックさせ
太ももで自身の体重をホールドすると
INSIST・カイザーを抜き取り
エレベーターの終着点の天井の4隅に
ワイルド・Bisonをぶち込んだ。
一発発射される度に
その凄まじい反動が
バイクごとロンを下方向に押し下げる。
レールに食い込んだホイールが
一層鮮やかに火花を撒き散らし
弾丸の発射に相応して
金属音の悲鳴を高鳴らせる。
4発の弾丸で4隅に大きく開いた穴から
天空の光が
導くように差し込んでくる。
そして残った最後の1発が
4隅の中心に撃ち込まれた瞬間
天井の鉄板は、強引に毟り取られるように
無慚な残骸となって天空に吹き飛んだ。
次の瞬間、
ロンのハーレーが地中から天空へと勢い良く飛び出した。
ビル5階程の高さまで舞い上がったロンは
その頂点に達するや
体重移動でバイクを平行にすると
右手でカイザーを抜き取り
片手で勢い良くブレイクさせた
空高く ブレイクしたフレームから
用を終えたシリンダーが
自ら重力に引かれ
ぎらつく太陽の光を反射させ
ゆっくりと回転しながら舞い落ちる。
既に落下運動に転じたハーレーに
仁王立ちしたロンの左手が、
フライト・ジャケットのポケットにある
スペアシリンダを掴み取り、
右手で保持するカイザーに装填する。
装填を終えると再びINSISTをホルスターに収め
着地に備えて身を構える
強化されたフロント・フォークと
リヤ・ショックが激しく衝撃を吸収し
ハーレーは大地をしっかりと踏みしめて
地面を大きく蹴り出し
駿馬の如く駆け出した
意表をつかれた兵士達は、ホールから一斉に出入り口に向かって走り出し、
出入り口の反対側に位置するエレベーター外壁周りに集結するが、
爆薬で吹き飛ばされたかのような天井の残骸が、周辺に散乱してあるだけで
ロンの姿は既にそこには無かった。
ロンは、基地施設のゲートへ向けてハーレーを走らせていた。
ゲート付近には、数10名の兵士が銃口を向けて立ちふさがる。
マッド・マックスのそれに似たホルスターから
再びINSIST・カイザーを右手で抜き取ったロンは、
300m先に横一列に並んだ兵士達を両脇からワンハンド・ショットで順に撃ち抜いていく。
兵士達の武器を的確に撃ち抜いている弾丸は
分厚い鉄板をぶち抜いたワイルド・Bisonではない。
ロンは先のシリンダー交換の際、
威力を抑えた44口径のノーマルシリンダーを装填していた。
兵士達との距離100m。
6発撃ち終えると右手でカイザーをブレイクさせながら
左手でハンドルを急角度で切り返し
ニーグリップで車体を寝かせ
ノーブレーキで
一気にドリフト体勢に持ち込む
勢い良く回転する2本のタイヤが
大地を鋭くえぐり込みながら
激しい砂煙を巻き上げる
ハーレーは
大地の抵抗に徐々にスピードを奪われ
敵陣列へなだれ込んで
息を切らす
止まるまでの数秒間の動作の中でロンは、
ドリフトするハーレーを左手一本で支えたまま、
ブレイクして空になったシリンダーを
右腕の反動だけで取り除き、
右足を女の子がゴムとびをする時のような感じで折り曲げ、
太ももとふくらはぎでブレイクしたINSISTを器用に挟み込むと、
右手でジャンパー・ポケットから更なるスペア・シリンダーを取り出し、
ハンドルを保持した左手を全く使う事無く
右手1本のみで装填を完了していた。
兵士達は舞い上がった砂煙で照準が定まらず
中には砂煙が目に飛び込んで目を開ける事すら
ままならない兵士も・・・
舞い降りる砂煙の中から横向きに停車したハーレーが
鮮明に姿を現した時
右手で突きつけられたロンのINSIST・カイザーで
兵士達は武器を撃ちぬかれていた。
再び大地を蹴って走り出したハーレーは、
ゲートを飛び出し一直線に伸びる舗装道路へ飛び込む。
その後を追ってバイクに跨った兵士達も慌しく次々とゲートから飛び出して行く。
バックミラーでそれを確認したロンは、
アクセル・グリップの付け根に付いているボタンに親指をあてた。
ロンのハーレーのリヤシート両部にはサイドバックが付いていて、
その片側にはボンベが搭載されており、
それがキャブのインテーク・マニホールド部分に取り付けられた噴射ノズルまで
何げにステンレス・パイプで繋がっている。
「ついてこれるもんなら ついてきやがれ!」
そう言って親指でボタンを押した瞬間、
エンジン燃焼室内に大量のニトロが気流となって吹き込まれた。
エンジンは唸りを上げ
タコメーターは跳ね上がり
リヤ・タイヤは急激なホイールスピンを引き起こし
路面にブラック・マークを刻みながら
放たれた矢の如く一気に加速し
一直線の路面に
太く長いブラック・マークだけ残して
兵士達の視界から消え去った
追撃兵を完全に振り切ったロンのバイクの上空に
Destiny 仕様にカラーリングされたMi-24 ハインドヘリコプターが現れ、
兵員輸送室部が下に開きロンは走りながらそこに回収されていった。
澄みきった青空に
Mi-24 ハインドの鮮やかなカラーリングが映え
Van Halen の I Can’t Stop Loving You が響き渡る。
『Wild-Bison』【File No.1-1】 プロローグ
~アドバン登場のシーン~
アメリカ・テキサス州
人口はカリフォルニア州、面積はアラスカ州に次いで全米第2位の州である。
ケネディーが暗殺されたあのダラスがある州と言った方が分かりやすいかもしれない。
土地も家賃も物価も税金も、何もかもが高すぎるカリフォルニア州と比べると、
テキサス州は土地も広く、物価も安い。
そのなかでも米国で最も豊かな都市、Planoには、
多くのトップ企業が本社を構えており、ダラスエリアで人気の出張先になっている。
あのTOYOTAも 2016年をめどに、アメリカのカリフォルニア州トーランスから
テキサス州Planoへの移転が決まっている。
ダラス北郊のコリン郡に位置するPlanoはプレイノもしくはプラーノと表記される。
そのプラーノの郊外にひっそりとたたずむ古ぼけた木造2階建ての建物。
その1階部が私の工房である。
工房の名は「GUN・スミス・Bison」
アメリカでは拳銃をカスタム・チューニングする職種をGUN・スミスと言う。
私もそのGUN・スミスの一人で、
私が手がけるGUNを「カスタム・Bison」という。
朝食を終えいつものように作業前のコーヒータイムをくつろいでいると、
ジェット機でも突っ込んできたのかと思う程の爆音を轟かせて表に一台の車が駐車した。
激しく自己主張するその車のオーラが
作業場の窓ごしから強引な程に突き刺さしてくる。
それが世界で最も高い市販車と言われているランボルギーニ・ヴェネーノや
ブガッティ・ヴェイロン(2~4億円)をゆうに上回る
8億円もする化け物、マイバッハ、エクセレロであることが
車好きの私の目を疑わせる。
手にしていたコーヒーカップをテーブルに荒々しく置くや、
まるで強力な磁力に吸い付けられているかのように窓辺に張り付き、
食い入るように見つめる両目は完全に見開いていた。
「すげぇ~」
見るものを圧倒する存在感。
「これがあのマイバッハ エクセレロか・・・」
ギラギラと黒光りするボディーのドアーが開いた。
どんな奴が出てくるのか私の興味は深々だった。
降りてきた男に太陽の光線がしいたげられ
大地に大きな影ができた。
まるで北斗ケンシロウかと見間違わんばかりのがたいに
黒のロングコート。
松田優作を思わせるグラサン顔。
のっさりと運転席から降りてきたその男が
私の工房の扉を開けた。
まるで格子戸をくぐるような格好で
工房の玄関ドアから侵入してきたその大男が、
どういう関係の人間かは、直ぐに見て取れた。
アドバン:「Bisonさんの工房ってこちらですか?」
ズ太い低音で私に話しかけてきた。
さっきまでの興奮が一瞬でさめた。
バイソン:「誰に聞いてやってきた?」
アドバン:「ケイクです」
ケイク・アート、私がよく知る人物である。
アドバン:「ケイクの紹介かぁ・・・」
ケイクは私が造るカスタム・Bisonの数少ない使い手。
この男は銃の製作依頼に来たのだと私は悟った。
その男が右手に持っていた大きなアタッシュケースを
工房のカウンターにのせ、
開いてみせた銃はS&WのM-500。
S&W社が開発した超大型回転式拳銃。
使用する50口径のマグナム弾は44マグナム弾の約3倍の威力を誇るといわれる。
市販されている拳銃用弾薬では最強と呼んで差し支えない。
バイソン:「おまえさんに良く似合ったGUNだな」
特大フレームであるXフレームを使用したこのヘビーなGUNは、
並の人間では振り回せない。
アドバン:「こいつをカスタマイドして欲しい」
私は工房を構えてはいるものの、看板は出していない。
一般人向けのカスタム製作は受けていないからだ。
ごく限られた一部の人間からしか製作依頼は受けていない。
バイソン:「ケイクの紹介かぁ~ 困ったなぁ~」
私が簡単に製作依頼を受け付けない事は、知ってるよな?」
アドバン:「知っています」
バイソン:「ケイクは何と言っていた?」
アドバン:「多分断られるだろう・・・・と」
バイソン:「その通りだな。 悪いが断る。」
アドバン:「断る理由は?」
バイソン:「お前さん、血の匂いがプンプンするんだよ。
そんな奴が手にするGUNじゃないんだ、カスタム・Bisonは」
その言葉に返す言葉がない男に私は更に言った。
バイソン:「おまえさんにとってGUNってなんだ?」
アドバン:「身を守る為の武器であり、相手を鎮圧する為の道具・・・ですかね。」
と男は答えた。
バイソン:「要するに人殺しの道具な訳だろ。」
俺の母国日本にはその昔お侍さんって人がいてな」
アドバン:「サ・ム・ラ・イ!」
バイソン:「そうサムライだ。聞いたことあるだろ」
アドバン:「はい、私も日系ですから」
バイソン:「お侍さんは自らの刀を武士の魂として崇めたものだ。」
アドバン:「魂・・・」
バイソン:「偉い違いだろ。人殺しの道具と武士の魂とでは」
その違いが分かるか、お前さんに?」
男にはその問いかけに答える術がなかった。
バイソン:「その答えを言えるようになったらまた出てきな。」
しばらく無言でたたずんでいた男が諦めてケースを閉じた。
アドバン:「武士の魂・・・・」
その言葉の意味するところに男は深い興味を抱いた。
アドバン:「その答え、必ず見つけて出直してきます」
バイソン:「お前さん、名はなんと言うんだ?」
アドバン:「アドバン・J・ルーク」
バイソン:「そうか。 覚えておくよ。」
というか忘れる訳がない
これ程までの存在感を漂わせる男を
私はかつて見たことがない・・・
Wild-Bison Vol.1
File No.1-4 大脱出(前編)
https://wild-bison.blog.jp/archives/19446012.html
↑のわたしのWeb小説をツイキャス朗読用に書き直します。
ネバダ州ラスベガスの北西――150キロ。
そこに、謎に包まれたエリア51がある。
その存在は、今日まで数え切れぬほどの噂を生み出し、
常に世間を騒がせてきた。
地上には目立った施設はない。
あるのは、世界最長とも言われる8キロの滑走路。
そして、軍用機を格納するいくつかの巨大建物。
だが、真の姿は地下に広がっている。
地下10階建て、東京ドームすら丸ごとスッポリと収まるスケール。
そこに築かれた秘密軍事基地は、
24時間体制の厳重警備で守られ、
決して一般の人間を近づけることはない。
――その地下8階。
物資や機材を保管する第4格納庫に、
一昨日、奇妙な木箱が搬入された。
高さ3メートル、頑丈な造り。
それこそが、ニコラがロンに託した「贈り物」であった。
その時すでに、警報ベルが基地中に鳴り響いていた。
外部からの侵入者を知らせる、甲高いサイレン。
そしてその通路を――爆音を轟かせながら、一台のバイクが疾走していた。
木箱の中身。
それは、ロンの相棒――
ハーレー・ダビッドソン、ダイナ・スーパーグライド・カスタム。
ロンは「目的のブツ」を手に入れ、
押し寄せる兵士たちを振り切りながら、
地上への大脱出劇を演じていた。
地下8階からエレベーターホールへと続く通路。
その一本、北側から一直線に伸びる道を、ロンのハーレーが爆進する。
リヤタイヤを完全にロック。
バイクは横に滑り、クランクケースが火花を散らす。
氷上を舞うスケーターのように流れながら――
ロンはホール入口へと迫った。
大型エレベーターとバイクのラインが重なった瞬間。
ロンはスロットルを全開に。
呼応(こおう)するように、
野獣のごとく吠え上げるエンジン。
クラッチが繋がれ、リヤタイヤが思いっきり床を蹴り上げる。
ぶっといゴムの固まりが
黒煙を上げ床面を思いっきり蹴り上げて、
流れて来た水平ラインから垂直に鋭く立ち上がる。
右太ももにしっかりと固定されているホルスターから
INSIST・カイザーを抜き出し
腰をシートにしっかりと沈めると
ハーレーの暴風ガラス越しに見える
分厚いエレベーターの扉に照準を構え、
真っ直ぐに突き出した両腕をしっかりと絞り込んで
一気にトリガーを引く。
耳をつんざく轟音と衝撃が、
その場の空間を破裂させ、
息を吹き込まれた弾丸が
暴風ガラスを吹き飛ばし
火花を撒き散らし
荒れ狂う猛牛の如く突き進む。
稲妻のごとき弾丸の軌跡は
鋼鉄製エレベータの扉を大きくぶち抜き、
着弾衝撃が更に扉をねじ伏せ、
ねじ曲がった鋼鉄の固まりが
無慚にも音を立てて更に地中へと崩れ落ちる。
ロンが放った一発。
それは、凶暴なワイルドキャット弾を超える威力を持つ――
「ワイルド・バイソン」だった。
銃を収めたロンは、
クラッチミートとアクセルワークでバイクをウイリー状態に持っていき
扉の抜けたエレベーターへ勢いよく飛び込んだ。
「間抜けな奴だ。エレベーターは最下部に降ろしてある……自ら落ちやがった」
兵士が覗き込む。
――その瞬間。
下から爆音が響き、バイクが垂直に駆け上がってくる!
「そ、そんな馬鹿な……!」
兵士はあり得ないその光景に唖然とし、思わず尻餅をついた。
その昔、「ワイルド7」という漫画があった。
八百(はっぴゃく)という男がいた。
彼は常にクールに、ダンディーに、男の世界を魅せていた。
八百のバイクには、クランクケースの下に二本の補助タイヤがあり、
まるでヤモリのように壁を這い上がることができた。
あの独特の走り――もう見ることはできない。
だが今。
ロンの走りはまさに、そのヤモリ走法を彷彿(ほうふつ)とさせていた。
しかしロンのハーレーには補助タイヤなど存在しない。
では、なぜバイクは壁を駆け上がるのか――?
ロンは潜伏中に、基地の隅々まで調べていた。
エレベーター支柱のレール幅を計り、
自分のバイクのホイールと合う溝を探し出していたのだ。
そのレールめがけてバイクを縦にウイリーさせた状態で突っ込む事で
前後2本の車輪ホイールを同時に食い込ませていた。
レールに強引に嵌りこんだ車輪は、
金属が激しくこすれ合い、
異常な発熱で真っ赤になり、
火花と激しい金属音を耳障りに上げながら、
バイクを重力に逆らい、上へ上へと突き進める。
金属と金属が擦れ合い、火花を散らす。
轟音(ごうおん)とともに、真っ赤に焼けたホイールが唸りを上げる。
――重力を嘲笑うかのように。
ロンとハーレーは、真っ直ぐに上へと駆け上がっていった。