そもそもの話が「みんなでT-64A作ろう」のはずが勝手にT-72作り始めたから全体の供給量が減ったし、平時で必要とされた供給能力自体はT-64も満たされてたし、戦時の増産も大量生産向けにコスト、生産性ともに向上したT-64の簡易版であるObj.439を作ったので問題は解決する見込みだった。そして当時の中央委員会部門長のヴォロニンは「全工場でT-64A生産が妥当であり、ワルシャワ条約国向けにObj.439を1976年頃から生産するのが最も合理的」であると言ってたしね。なんならT-64に比べて非金属を大量に使用した車体のT-72は本当に戦車が必要な戦時にそもそも生産できなくなるよ。なので労働集約性は確かに重要な要素の一つだけど、労働集約性に優れているからって平時に大量生産できる=戦時に大量生産できるが成り立つわけではないので、軍事に関わる製品でそれだけを重視してはいけない。
T-72の車体底部は抜き打ち加工をするために材質的に延性が高く、RHAより伸び限界は25%高い。これが意味することは「変形に対する抵抗力は低いが、爆風に対しては延性が働き破断しにくい」こととなる。爆風に強いなら対戦車地雷に対する耐久性が高いのは事実であるが、それは「装甲に爆風が当たり変形はしたが破断はしてない」を意味する。もちろんそれ自体は優れた点であるが、地雷の場合は足回り等から衝撃が伝わるため、爆風以外の大きな衝撃が加わる。また、高速走行で車体底部に何らかのものが接触した場合やある程度の段差から落下した場合など、車体底部に爆風以外の力が直に加わることがある。これらは戦車にとって甚大な被害ではないが、AZにとっては甚大である。なぜなら8mmの変形で動作しなくなるのだから。まとめると、材質の都合で車体底部は爆風には装甲圧の数値以上に耐える可能性があるが、地雷の衝撃や爆風、物体や地面の接触、落下の衝撃などで局所的に起こる変形は数値で思っていたよりずっと生じやすい。その時に8mmの変形で動かなくなるのは信頼性を損ねているよね、という話。
そもそもソ連もロシアもMZとAZに関してはどっちが悪いとかの問題視をしていなかった(というか車内の予備弾の方が問題視されてた)が、弾薬投影面積が大きいのは確かに問題、しかし車体で最も被弾率の高い正面から見ると複合装甲の防護範囲内なのは変わらない。また、側面装甲の装甲圧自体はT-64の方が優れているので、その欠点は貫通して初めて問題になる、という前提は踏まえなければならない。操縦席とのアクセス性が悪いのも確かに重大な欠点。電気油圧なのもまあ電気だけに比べたら油圧は高温になるし欠点と言える。天板に関しては設計当時はトップアタック兵装がないので欠点ではあるが、今だから問題になるのであってAZの天板は当時は活きにくい利点ではある。なんなら危険な弾薬庫配置なのはどっちも変わらんので今に至るまで使うんじゃないよ、という話でもある。持続的な火力投射に関して、砲兵的な運用と捉えるなら確かに戦車の仕事の半分くらいは榴弾を投げることである。しかし、戦車の弾薬搭載定数(どの弾種を何発積むか)は決まっており全部榴弾にするということはない。また持続的な射撃をする際は弾薬を集積し牽引砲や自走砲と同じような形をとる。その状態では予備弾へのアクセスは問題にならず、むしろ手動で装填し続ける際の装填時間が問題になってくる。この時MZは毎分0.8~0.7発でAZは毎分0.7~0.5発とされており、実はMZの方が火力投射力自体は高い。まあ数時間にわたる持続砲撃の際は、その時間の長さに応じて撃っていい毎時の発射数が下がるため最終的にはMZもAZもさして変わらない(装填時間より待機時間の方が長いため)が、待機時間が装填時間を下回っているうちはMZの方が投射量自体は多くできるよ。そりゃどこぞのバンドカノンみたいに十数発フルバーストしてクレーンで一気に装填、またフルバーストって撃ち方ができたらAZの方が強いかもしれないが、あれだって後方へ一旦退避するそれなりの時間で間隔が空いてるし、そもそも規模の大きい大砲というのは発生する熱量も砲身に溜め込む熱量も多いから、銃と異なりすぐには冷めないのでそんな馬鹿な運用はしないよ。だからこそ自動装填装置に保持する弾は会戦という区切られた時間単位に十分な量が基準になるのは東西変わらない話で、予備弾からの補充が遅いとかの話をするなら西側は(車内から補充もできるけど)基本車外から補充するんだし、もっと問題になるでしょ?って話。別にMZ/AZとの比較をしてないし、MZの予備弾からの補充が遅いのを問題にするなら西側のものはもっと問題だけど、それが問題になってないからあのような形になっている訳で、予備弾からの補充が遅いことは欠点だけど戦闘特性に影響を及ぼすかと言われたらそうでもないから欠点だけどそれがあるからダメな欠点じゃないって話をしている。文章をよく読んでくれないか。じゃあAZはMZに比べて製造にかかる作業量が1700時間から2600時間に増えてる。これは大きな欠点だ!!AZはダメ!!って言ったら納得するの?別に戦闘特性に関係ないから欠点だけど特筆すべき欠点ではないでしょ。そういう話。
あと自分は一貫して冷戦中の話をしていて冷戦後のセールス云々は正直知らない。でもT-64Aの改良型と言って高い・性能低い・希少資源ドカ食い国家財政気絶部・改良したのにウラルは複合装甲無しなT-72は「戦車類似品」と揶揄されてもしょうがないし、ソ連によるT-72の採用を「国家的犯罪」「タギルによる野心と愛国心を満たすためだけの国家資金の犯罪的浪費」と評したのも間違っては無いでしょう。当時のウラル設計局の動力装置責任者のヴァビロンスキーは「工場ではT-64から脱却するためのあらゆる積極的な措置が取られた。まず、我々の工場と設計局の愛国心がT-64の生産を許さなかった~」とかほざいてたし、戦車開発におけるゴタゴタと技術の停滞と冷戦中の技術移転失敗で今に至るまで苦労してることを考えたらすべての元凶のT-72採用は「国家的犯罪」と言えるっちゃ言えるかな。T-64Aを全工場で作り、Obj.439をワルシャワ条約加盟国で使い、T-64Bを作り、T-64BMケードルを作り、T-64をガスタービン化させようとT-80作ったけど6TDが実用化できたからそちらを使い(こっちの方がドクトリンにも合致してるし)、T-64BMケードルの砲塔を載せればT-64BMと攻守同等で走の性能とその性能を出すために必要な車体の拡張性が手に入ったT-80UDができるんだから、それを全工場でまた作ってT-64A/B/BMをだんだんと代替すれば、T-80UDをより早くから多くの工場で作れて配備数が多くなるし、1987年にやってたT-72B、T-64BV、T-80BV、T-80U、T-80UDの5種同時生産が2種になるし、エンジンの技術移転も優先度高くなるから今のエンジン周りで苦しむこともなかった。この流れの中でT-72を入れなければならない部分ない。だってT-72はT-64の自称改良型であって、自称改良型の改良型も10年逆行した性能だったし。そしてT-80はT-64のガスタービンエンジン化が開発の目的なんだから、T-80の車体と6TDFができた時点でガスタービンを捨てドクトリンに合致した6TD積んで冷戦中ソ連で一番性能バランスが高水準なT-80UDに進化するからT-72の系譜は要らない。