マジでなんだこいつ……そう思いつつ僕は彼女を下の階に案内し、軽く食事を与えることにした。もしかしたら何か事情のある家出少女かもしれない、そう思えば不憫だったからだ。
作ったのはサンドイッチ。それとコーヒーだ。本来売り物だが見たところお金を持っているようにも見えないのでサービスとしておく。
「ん~~~…………」
彼女は特に感想も言わず、ちびちびとサンドイッチを食べている。口が小さいので食の進みは遅いが、不味いと思っている顔ではなさそうだ。いや、やっぱり分からない。表情が変わらないし何も言わないのではお手上げだ。
「!」
と思ったら、コーヒーに口を付けた瞬間彼女の顔が急に険しくなった。目元は変わらないが栗みたいな口で眉間に皴を寄せている。
「苦いんですけど~……」
『あぁ、ごめんごめん……砂糖とミルクがあるよ。好きなだけ入れて良いからね』
やはり早かったか。僕は苦笑して砂糖とミルクの入った容器を勧める。
「ん~……桃ジュースないの?100%のやつ」
『あはは……ごめんね、桃ジュースは置いてないなぁ。ソフトドリンクはあまり揃えてないんだよ』
「じゃ買ってきて」
は?
「ダッシュ!」
あっ、はい…… 僕は店を出てスーパーに100%桃ジュースを買いに行った。なんだこれ?
「遅~い。待たせすぎ~。じゃ、それに牛乳入れて。あとは~……はちみつかな~」
椅子に座ってパタパタと足を振りながら待っていた彼女に、言われるがままドリンクを作る。このわがままっぷり……もしかしてどこぞの御令嬢か何かかな?
「うん、OC!このドリンクをもものスペシャルと名付けよ~」
あまり表情に変化がないので分かりにくいが、どうやら気に入って貰えたようだ。
『ところで……ちゃんと聞いておきたいんだけど、どうしてうちのベッドに入ってたの?』
「眠かったから」
会話不能だろコイツ……
『ん゛んっ……えぇとね……じゃあ、とりあえず……僕は黒羽 蒼葉。ここで喫茶店をやってるんだ。キミの名前を教えてくれないかな?」
僕は目の前にある頭を引っ叩きたくなる気持ちを抑えつつ、順番に聞いておくことにした。
「名前? ……ん~……」
彼女は名前を聞かれるとなぜか考え込むような素振りを見せる。
「……あっ、そうだ。 ────ももの。百上 桃乃……確か。そんな感じにしたと思う」
『ももがみ……もものちゃん、ね……」
「うん、よろよろ~~~」
無表情かつ抑揚のない声でそう言い、両手でピースをして前後に動かして見せる。
突然僕の目の前に現れた正体不明の少女。分からないことだらけだが、1つだけ分かっていることがある。
この子と関わると────碌なことが無い!!
