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ヘザー「ギュゥゥゥゥ……ィィィィ………ン……―――……っ……」
(―――例え、尋常ならざる程の強靭な人間であっても。"仮想敵"ではなく、生身の身体に向けられた刃は、その生命を容易く切り裂いた。)
(『プラス・ワン』の稼働を止めても尚、その蹴りの勢いは完全に衰える事は無く……身体は右脚の推力で大きく振り回され、地面へと真っ逆さまに落ちて行く。)
(その中でも尚、確実に致命傷となる一撃を叩き込んだと確信していても、失われた筈の脚に、命を奪った感触を感じたとしても。幾つかの感情を込めて、鉄巨神と共に崩れ行くティネルの顔を見据え続け)
(殺すべき"敵"としてでは無く、かつて憧れ、背を預けた"総団長"としての眼を、表情を確かに感じ……それでも、レギュレイターに刃を向けた"敵"を、否定せねばならないと拳を握り締め)
ヘザー「―――――さようなら、総団長。いや……ティネル・カルロウ。貴女の……事は、嫌いじゃ無かった。いや、きっと、尊敬していた……それも、今日まで、だ……!」
(その身体が崩れる鉄巨神に隠れ、見えなくなるその時まで目を逸らさず、激しく損傷しながらも何とか稼働する三本の鉄脚で地面へと着地する)」
ガッッ―――――――シャァァ――――ン………
(轟音と共に地を踏む三本の鉄脚。しかしティネルの最期の振り下ろしを受けた二本が、限界を迎えて一本は拉げ、一本は先から砕ける)
ヘザー「――うっ、ぐっ……!限界、か―――ははっ、流石に………アレと正面から打ち合うのは無茶だったか、改良の余地あり、ですね、博士……」
(着地に用いた三本の鉄脚のうち、二本が崩壊した事によりバランスが崩れ、その場で尻餅を付く形で地面へとへたり込み……うち一本を背に置き、その鉄脚へともたれ掛かり)」
ヘザー「……致命傷を与えたのが、博士の用意した『四脚』でなく、うちの兵団で作った『もう一本』で、良かった……本当に……せめてもの、救いだわ……は、はっ……ガッ……ン゛ン、ブッ……!!……クソ…っ…」
(最早、自らに対しての慰めでしかない……そんな言葉を吐いて微かに気が緩んだ瞬間。)
(内臓から逆流した血液が口から溢れ出し、思わず手でそれを受ける。そして手を染めた、その黒々とした血液が、右脚に付いた血と肉片が、体中の傷から流れ続ける血が否応なしに目に入り)
ヘザー「……もう、動けない、か…………………」
ヘザー「…………もう一仕事、しないと……ね…………」
(左の義足、その根本に保持していた無線機に手を伸ばし、スイッチを入れて兵団全体へのチャンネルへと周波数を合わせ)
ヘザー「……こちら………第6……調査兵団、ヘザー・タウンゼント」
ヘザー「……(息が、苦しい。視界が、歪む……ショック症状、か……参ったな……ただ、まだ……頭が回る内に…)……レギュレイター本部にて、総団長ティネル・カルロウが乱心……故意に我々調査兵団への無差別攻撃を続けたため、これを……制圧。」
ヘザー「故に、今後は……各兵団長の、独自判断に……基づき、その指揮下で……行動する事を、強く、提言、する……」
ヘザー「………(まだ、死ぬつもりはない。目の前で爆弾を喰らっても、足が吹っ飛ぶだけで生きていたんだ……この、程度……でも、今は……)そして……第六……調査、兵団、各位へ告ぐ。"私は指揮・作戦行動に参加できる状態ではない"、それ故に……『プロトコルB-1x』を発令。以降は、ヨールダン・マッケインに…………団長としての、権限を、移行。同時に、バン……レッジ……カテプに…………副団長……権限を、移行……」
ヘザー「―――…………以上……いや…………もう一つ。」
ヘザー「―――――皆の、幸運を祈る」
.
.
「―――ジジ……ッ」
「ああ、ちくしょう…………フェス…………行きたかったな………」
(切り損ねた無線機が、声の主が決して周囲に漏らさなかった……ほんの小さな愚痴を拾った)