ゼフィリーヌ
2024/05/12 (日) 22:56:00
ゼフィリーヌ「――――――――…………」
ゼフィリーヌ「―――――」
身体が動かない。視界が歪む。耳鳴りが酷くて、外の音が何も聞こえない。
感覚だけは、微かに残っている。だがそれも、血液が、魔力が、生命が……私の身体から流れ落ち、喪われて行く事を知らせているだけだろう。
考える。何をするべきか、何が出来るか。
眼前の敵は、まだ生きているかもしれない。斃さなくてはならないのに。
新世界から久しぶりに帰ってきたのだ、皆に会わないと行けないのに。
母様の容体は悪くなっていないだろうか。
いつも忙しい兄様と義姉様は、調子を崩してはいないだろうか。
ジャクリーヌは、今日も元気だろうか。以前教えた事は、今は出来るようになっているだろうか。
兵頭とは仲良くやっているだろうか。兄様とは、義姉様とは。
友人が出来たと言っていた。どんな人たちなんだろう、悪い人達で無いだろうか。
話を聞きたいのに、色々な事を教えなくてはならないのに。
そうだ、動かなくては。立たなくては。
母様と父様から貰った、丈夫な体と沢山の魔力が私にはある。
そう、もう一度身体を起こして、足を動かして、まずは立ち上がらなくては。
そうして………………
ゼフィリーヌの身体が僅かに震え、ほんの少しだけ左足が上がる。
それが、最後の動作だった。
左足はそのまま動力を喪って地面へと落下し、割れた顔面から微かに放たれていた空気の入出音が消える。
傷だらけの抜け殻と静寂だけが、そこには残っていた。
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