カオスドラマX

Gray Traveller / 457

457
わったん 2026/01/04 (日) 19:44:16 修正 >> 453

懐かしむような口調。
傍ら、セイブは普段から表情を変えない彼のその僅かな変化を見て、瞳を縮小させていた。

「そうして牛飼いを営む俺の様子を、裁縫屋の人達が実は見守っていてくれたって事も」
「俺の両親が、彼らとの思い出を大切にしていたからこそ、気づけたことだったんだ」
「……それに気づけたのは、俺を引っ張りだしてくれた人が居たから」
「俺は忘れないんですよ。記憶が無くなろうと、例え冒険記が無くなろうと」
「俺は、思い出を紡ぐ旅人だから」

「……」
「ご両親から愛されていた事に、気づけたんですね」

「所詮は受け取り手の解釈次第ってところはあるんでしょうけどね」

「……でも、覚えているじゃないですか。貴方も」
「その『幻聴』を」

「……そうですね……」

互いに小さく息を吐く。
笑みを交えたその吐息は、霧の中でも強く輝いていた。


「……これは興味本位で聞くのですが」
「アトリさんとの思い出も、忘れずにいるんですよね」
「聞かせてください。ラックも聞きたがっていますよ」

「いいですよ」

「あの、聞きたい内容は色々あるんですけど」
「……ラックも聞きたがっているっていうのはあるんですけど」
「色恋的なところなんですが」

「……俺が彩る感情においては、自分の中で留めておきたいところです」

「それなら、彼女に向けたその感情の一端だけでも――」

「……」ダッ!

霧を晴らす事さえ厭わない程の超加速。

「あ……」
「ちょ、ユンフさん!待ってください!!」
「いつも優しげに話してくれるのに、何故逃げるんですか!」

L社の巣で展開された思い出の話。
二人は写真を持って、その霧の中を駆け抜けた。

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