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街路に沿った麦畑の僅かな外れ。
太陽の日差しを存分に受けながら、分厚い書物に眼を細める老人が居た。
モノクル越しでも分かる、その哲学的な文字を見つめるその様を見て、
彼はある種族に触発された人物である事を察知していた。
「若いの」
「ティダの村はどうかね」
書物に眼を通したまま、付近を通りかかったユンフに言葉を投げかける老人。
「看板通り、希望を連ねた活気のある村です」
「太陽の微笑みを受けた、優しい村」
「そう感じる事が出来るのは、お主が旅を重ねているからであろうな」
パタリと本を閉じ、皺くちゃな顔を彼へと向ける。
その年季は、都市においては珍しくさえもある老人の姿であった。
「若いの。どうだね、少し閑話に付き合っていただけるかな」
「村長に会う前の、気分転換、という奴かの」
「……」
「俺が都市の人間である事は、認識しているんですね」
「あぁ、そして、このティダの村に関する存在であることもまた」
「自ずとわかる」
「……理由をお聞きしても?」
「私が長生きしているからだ」
「何、この現象下における制圧の中で、お主から感じる色の濃い旅路に中てられた」
「……そうだな、こういう問答はどうだ?」
「その旅は、足に纏わり付く身も心も冷え切ってしまいそうな水を掻き分け」
「ただひたすら、何処へ行くとも知れない道を歩むが如く暗闇」
「だが、確かにある。希望の光」
「その光を、お主が抱えている」
「私達、ティダの村の住民が追い求めた種を、お主が持っている」
「そう感じた、そう感じられる程、私は都市で長く生きてきたからだ」
「……」
「どれ程歩き続けたかは分からない」
「水の凍て付く様な冷たささえ分からなくなってしまう程、俺は無感情に歩んだ」
「だが、それは途中までの話」
「俺を照らした太陽は、俺に温かさを教えた」
「その暖かさを以て、自分以外の気配を感じて、旅の疲れさえ愛おしく想い」
「俺は種を蒔いていった」
「歩む先に僅かな希望が見えれば」
「その希望が、俺達の種を育てていってくれるだろうから」