カオスドラマX

Gray Traveller / 546

546
わったん 2026/03/22 (日) 21:05:54 >> 543

小川のそばの開けた原っぱに、キャラバンの馬車が一台。
焚火も消さずに、腹を天に向けて寝てやがった。
こんな無防備にも程がある有様を見てしまえば、魔物だって呆れて襲いかかってこないだろうに。

「ありゃ深酒したに違いねぇ」
「早く帰って麦酒をたらふく飲みてぇな~」
「昨年はお前とテトがやっと飲み始めて楽しくなってきたってところだったのに」
「あのバカが――」

ひんやりと冷たい夜の空気の中でも、ティダの村で栽培した麦から作った麦酒の記憶は、
俺の心を、着ている装束よりも温めてくれていた。

「――しかし、このペースじゃやっぱり厳しいよな」
「船渡はメタルマイン丘陵に一隻しかねぇとなると」
「どう頑張っても2週間は掛かるぜこりゃ」

……割り切る、か。
俺としては、家族に顔見せて安心してほしいって気持ちが強かった。
だが、それはそれとしてどうしようもないことだってある。
旅をしていて、そんなときは幾度もあった。
どう考えたって取れない宝箱。
ホーリーが発動出来ないのに襲いかかるレイス。
だが、俺は諦めが悪い方で、どーしてもそいつらをどうにかしたいって足を止める。
大抵は仲間の皆に気絶するまでボコボコにされて、気づけばミルラの木の前とかあったな。
……なんでも、自分で出来るって思っていた。仲間が居れば、全てが上手く行くって。
でも、そうじゃないことだってある。
ミルド=デリスは、その事象に向き合った時、心が壊れないようにと、俺に受け入れる事を教えてくれていたんだ。

「……今年はキャラバンの皆で過ごすか」

だから、俺が諦めたような言葉を発した時。

「……」

悲しそうにも、嬉しそうにも……。
そんな、弟の成長に複合された感情を抱く兄貴みたいな顔をしていた。

「……」
「……ほ~!嬉しい事言ってくれるじゃねぇか」

でも、すぐ笑ってくれたな。

「で、どうすんよ」
「もし宴をするってんなら、豪勢に行きてぇだろ」

「あぁ、それなんだけど」

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