カオスドラマX

Gray Traveller / 589

589
わったん 2026/04/19 (日) 19:36:22 >> 580

目を覚ました時、見覚えのある場所だった。
知っている家、知っている部屋。
知っているベッド。

「……」

あの時と同じ。
ただ、星が良く見える夜だった。

「意識が戻ったか」
「よく寝る奴を拾っちまったもんだな全く」

知っている老人。
その輪郭をなぞる、カンテラの小さな光。
半身を上げると、俺のベッドの横で、腰掛けているのを確認した。

「子供達が君を運んできた」
「……きっと、暦を知って絶望して、倒れたんだろうと、俺は思うが……」

「……」

「子供達から聞いたよ」
「ケアルをくれたんだってな。ありがとよ」

「……」

「……悪かったな……希望を持たせるような事を言っちまって……」
「君が気の毒で、俺の罪悪感と向き合う事が出来ず」
「ハッキリ、言うべきだったんかな」

「……」

「ティパの村のキャラバンは失敗した」
「轟雷や豪雨が吹き荒ぶ中、魔物に襲われて全滅しちまったんだ」
「あの子たちは、その亡骸を供養しに、そしてケージを回収する為に自ら出て行った子なんだ」
「案の定、ミルラのしずくは集まりきっておらず、その情報は手紙として先に来た」
「村全体が察したよ」
「もう、終わりなんだってな」

「……」

「だからこそ、まだ希望を持っている君に、例え現実と乖離していようともそのままで居て欲しかった」
「もしかしたらってのを、願っちまったんだ」

「……」
「ティダの村の情報も……」

「手紙で一緒に来た」
「……なんて、声掛けりゃいいんだろうな」

「……」

「さ、腹減っただろ。なんか食うか?」
「母さんの飯は美味いんだ。ほしがたにんじんを細かく刻んだスープでも用意してもらおうか」

「俺は……」
「もう、帰れないんだな……」

「……」

「……クリスタルケージは……?」

「置いてある。一滴たりとも使っとらんぞ」

「何故」

「さてな……俺にもわからん」
「ただ、村人総勢、覚悟を決めている」
「子供達もそうだ」
「死ぬわけではない」
「皆帰って来て、残りの時を過ごしたら」
「何処かに逃げようなんて話もあるからな」

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