カオスドラマX

Gray Traveller / 597

597
わったん 2026/04/26 (日) 21:28:45 >> 595

浜辺で柔い木の棒と、鍋の蓋を盾に武器を振るう未来の希望達。
立ち位置を変える度に、砂の細かな崩れる音と、波が攫う囁きが交互に聞こえてきていた。
その最中、彼女らは俺に気づいて手を止め、笑みを浮かべて迎えてくれた。

「おにいさん、こんにちは!もうすぐこんばんは!」

「武器を振るうのには慣れてきたか?」

「うん、順調順調!」
「最初は盾を構え続けるのもつらかったけど、もうへっちゃらだよ!」

「おにいさんの教えてくれたコツ、本当に分かりやすいからすぐ慣れました」

「そりゃよかった」
「俺が剣を握り始めたのは、君達よりももっと後の年齢だったんだけど……」
「ティパの村の未来は明るいな」

「おにいさんだって、まだ若いよ?」

「あぁ……そうだな……」
「次の出立は、半年後だろ?」
「それまでにしっかり腕を磨けよ」

「うん!」
「大人の皆にも負けない強いキャラバンになるよ!」

「そいつは結構なことだ」

「……おにいさんは、一緒に来ないの?」

「……」
「俺は……」

「ダメだよ。おにいさんは心の傷があるって――」

「おにいさん、私達は、おにいさんに救われた命を紡いでいるの」
「希望を胸に、未来を描く」
「私達は、おにいさんに教えてもらったんだよ」
「この世界を生きて往く上で、大切な事を」
「思い出を忘れずに、旅をしていくことを」
「だから、その姿を」
「見守って欲しいって」

「……」

且つて、仲間たちに馳せていた思いが沸きあがる。
俺もそうだった。
キャラバンとして生き往き、いずれ訪れる静穏なる生活。
其処は黄金畑の中心であり、俺が家族と笑顔で歩み往く世界。
そんな世界を、お前達に見て欲しいと、見守って欲しいと、そう願っていた。

「……」
「正直に言うと」
「辛い記憶が、俺の心を痛めつけるんだ」
「旅の思い出を、俺は忘れちゃいないけど」
「思い出すと、辛いんだ」

「う……」

「だから、俺は君達に希望のつどったミルラのしずくを託した」
「旅なんて出来るだけの精神を取り繕うことさえ出来ない」
「俺はもう、キャラバンじゃないんだ」

「そんな……じゃあ、ずっと村でじっとしているの……?」

「……あぁ、君達の帰りを待っているよ」
「本当は、君達と一緒に帰りを待つのがいいんだろうけど」
「やる気なんだろ。クリスタルキャラバン」

「はい……僕達は、おにいさんの希望を紡いだんです」
「なら、この村を世界が平和になるまでずっと護って行きたいんです」

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