『ラモエは俺だけじゃ飽き足らず、お前という存在にも手を掛けてたのか』
「……俺の事は、どこまで?」
『ラモエの記憶が見せた、お前の哀しい思い出ってのは』
『俺にとっちゃ胸糞悪いもんだった』
「それも全て、俺を構築する行路です」
『元々行路が一つだった奴は、基盤となる旅路に総てを委ねる』
『お前は元々がどうしようもなかったから、その哀しい思い出さえ自分のものにすんだろうな』
『……』
『零れ落ちた』
『俺の生きる意志も、仲間達に託された想いも』
『その全ては、俺が今、残存する世界には存在しない』
「えぇ、だから貴方は創ったんですね」
「ティダの村を」
「……村人の人格は、嘗て貴方が思い出として所持してきたもの」
「旅で培った人々との交流が、そのまま反映されているように見えた」
『……敢えて聞くが』
『俺がそうする理由は何だと思う』
「故郷で成せなかった風景を再現するため」
『半分ってところか』
『その半分にしか至らないところが、お前自身が既に都市に染まっている理由かもしれねぇ』
「……」
『……違うか』
『お前も、足掻いている人間だもんな』
『俺と同じ、故郷の風景を胸に秘め、都市を生きるクラヴァット』
『諦観を拒絶したはずが、受け入れちまっている憐れな存在』
黄金畑によって開かれた窓から、高い位置の風が室内に吹き荒ぶ。
結晶内の風景は一切揺れず、大切な時を護るかのようにその固有結界は微動だにする事はなかった。
『何故、お前のような存在が都市に居るのか』
『簡単な話だ』
『何の因果か、都市と繋がれたラモエという存在』
『奴が最後に食ったのは、ティパの村のクリスタルキャラバンの思い出』
『絶望とは程遠い、希望に溢れた尊き思い出だ』
『その中に、お前の存在は無い』
「……」
『裁縫屋の繋がりは、家族を思う呪いだった』
『お前も知らない代々受け継がれたキャラバンの意志』
『その光を浴びたラモエは、さぞ苦しかっただろうな』
『哀しき思い出さえ打ち破る、あの黎明』
『その黎明を愛するお前を見たアレは、その抑鬱を欲するだろう』
『お前を哀しみが続けば、きっといつか復活出来ると』
『だからティダの村を選んだんだろう』
『お前を誘う地』