カオスドラマX

Gray Traveller / 619

619
わったん 2026/05/04 (月) 21:52:39 >> 614

思い出を探し、故郷に帰る。
ただいまを言う人が居る。
彼はその願いを胸に、都市を奔走してきた。
嘗て対峙してきた者達は、そのユンフの胸中を推し量る度量はあれど、
その心中における風景を体験してきたものは居ない。
それ故に、これまでの対話において自身の思い出を語り、
自身の方向標を示す事で、成すべき行路の一つとして語り相手と心を共にしてきた。
だが、目前で縛られた者は違う。
既に、体験してきたものだった。
ましてや、自身の成り立ちの根源であり、
ひいては、自身が存在する所以。
更に、同じ志を持つ都市に生きるキャラバンであった。
だからこそ、ユンフは彼がねじれとして成そうとしている事に、
同じ心を重ねてしまっていた。
そんな彼に理解を示す事が出来なければ、
アトリと共に帰る為に、都市を奔走する自身を否定してしまうようで、
彼は心の内を掴まれているような苦しさを、隠していた。

『ユンフ、お前は何故生きている』

唐突に差し込まれる問い。

『思い出のため』
『そう、お前は言う』
『だがな、それはお前自身や、都市の人間から見たお前の像だ』
『俺は、お前の同類』
『だから分かる』
『お前は、生き残っちまったんだろ』

「……」

『アトリという思い出が眠り、自分が起きたままの世界』
『望まぬ世界』
『お前は、生き残っちまったんだ』

「……」

『本来、お前と云う存在は普通だったんだろうな』
『だが、瘴気に満ちた世界で生まれ、親を亡くし、重責に囚われ、憂鬱に沈んだが故に普通から外れた』
『最初からそうだったんだろ』
『お前はただ生きていた』
『旅の楽しさ、世界の尊さ』
『そんなもん度外視だ』
『ただ生き残る為に、ただ村を存続させる為に』
『ただ同郷の子を護る為に』
『そんな奴が、ある日から生きる意味を見出した』
『希望を持ち始めた』
『だが、結局は生かされていただけ』
『俺もお前も、ラモエの玩具になっただけ』

「……」

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