わったん
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2026/05/25 (月) 22:01:31
―22区―
無機質なる空間。
崩壊済みの高層建築群。
かつて此処一帯へ絡みつくように繁茂していた黄金畑は、既にその姿を喪っており、
都市特有の陰湿なる冷気と、乾き切った鉄錆の臭気だけが残滓として滞留していた。
「……」
一人の男が、鋼鉄を携えたまま、瓦解しかけたビルの内部より姿を現す。
その歩調は定まらない。
明確な目的地を持つ者の歩みではなく、
何処かへ辿り着こうとする意志そのものが風化した、流浪者にも似た歩行。
或いはそれは、
『帰郷』という概念を喪失した人間の、最後の慣性。
「……」
22区の路地。
其処にはティダの村の面影は無く、
正気へと引き戻された住民達は、崩壊した空間を見渡しながら、
互いの無事を確認し、慌ただしく避難経路を確保していた。
誰かが泣き。
誰かが怒鳴り。
誰かが安堵し。
誰かが膝を折る。
都市に於ける生還の光景。
「……」
男は都市の喧騒の中、ただ歩む。
抜け殻のような空気を一切隠そうともせず、
何の為に生きているのかさえ理解出来ぬまま漂流する、感情の残骸。
人間という輪郭だけを辛うじて保った、空虚。
「……」
歩む。
「――あ、ユンフさん」
「良かった、俺達を解放してくれたんだな」
「助かったよ」
住民の一人、馬車を直して欲しいと頼んだ一人が、彼に声を掛ける。
その声音には、確かな安堵と感謝が滲んでいた。
だが、返答は何もなく、ただ力無く歩んでいた衝撃で、揺れ動いていた首を僅かに動かすだけであった。
「……ユンフさん?」
困惑したように呼び掛けにさえ応えない。
周囲を見渡す。
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