カオスドラマX

Gray Traveller / 715

715
わったん 2026/08/09 (日) 20:33:02 >> 713

「『安寧の煌めき』の事件詳細」
「……過去に解決した事件」
「横道」

紙面へ視線を落とす。
そこには、かつて彼自身が関わった事件の記録が、淡々とした、
だがそれでも色彩に富んだ筆致によって綴られていた。
それを読んでも胸の奥に何かが響くことはない。
文字は読める。
意味も理解出来る。
それなのに、その出来事が自分自身の過去であるという実感だけが、どこまでも希薄に浮かんでいた。
資料を捲る。
その下に埋もれていた別の資料へ、視線が移る。
あらゆる指との因果関係。
そこから派生した事件の数々。
複数の組織が絡み合い、都市の各所へと波及していった事象。
それらの詳細が、『セブン協会』時には『ハナ協会』との連携を以て記録されていた。
一枚。また一枚。
紙を捲るたび、過去という名の墓標を掘り返すような感覚があった。

「……」

その中でも、彼が直感的に視線の移った文字。
その無数の記録の中で、彼の視線が吸い寄せられる。
『薬指ギャラリー潜入捜査』の資料。
其処に描かれた『思い出』の単語。

「……」

直感的な意志。
彼はそれを手にすると、早足に仮宿を出て行った。
残された室内には、再び静寂だけが沈殿していく。
埃を被った机と、冷え切った暖炉。
そこに残された無数の過去だけが、忘却された時間の証人として、誰にも読まれぬまま佇んでいた。

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