カオスドラマX

Gray Traveller / 717

717
わったん 2026/08/16 (日) 23:52:19 >> 716

内部へ足を踏み入れる。
そこに展示されていたのは、悍ましさという言葉だけでは到底括れない作品群だった。
生体そのものを素材とした芸術。
血肉の表現を忌避するどころか、生命が有する生々しさそのものを作品へと昇華させている。
臓腑を想起させる造形。
生物の輪郭を歪めた彫塑。
生命そのものへの畏敬と冒涜が、判然とした境界を持たぬまま混在している。
猟奇的な発想から生まれたそれらは、生命を嘲弄しているようにも見えれば、
逆説的に、その脆弱さと儚さを誰よりも凝視しているようにも見えた。

「趣味の悪い……」

心の奥底に湧き出る感情を抑え込みながら、ギャラリー内部を歩む。
目的地と言える部屋の途中、ベレー帽を被ったスチューデントに声を掛けられた。

「内部監査……でしょうか?」

「複雑な事情があるだけだ」
「ユンフが彩った軌跡の中の、重要な何かがある場所」
「それが此処だって直感的に信じた道」

「とてもじゃありませんが、特色はオークションが催されでもしなければご来校する事はありません」
「貴方のような『線』を描いてきた人が、我々点描派の作品に共感を示すとは到底思えないのですが……」

「……作品を見に来たわけじゃない」
「ただ、其処の部屋に用がある」

透明の軌跡が指し示した先。
掲げられた名称は――

『マエストロのギャラリー』

通報 ...