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「インテュイション(直感)さえ沸きませんか」
「……アンタたちが表現し合ったそれは」
「記憶があるから出来た事なんだろ」
筆を持った腕を力無くぶら下げ、自傷気味に小さく笑う。
その様子を見たドルドインは、そんな彼の笑みを見ないように目を伏せた。
「現在から派生した過去や未来」
「それらを描くのに必要な事はその人が人たる信念」
「客観視から生まれた評価に怯える事はあれど」
「何も表現出来ない事は、模倣(ミメーシス)さえ叶わぬ事」
「俺には過去がある」
「都市で出来た、横道が――」
「では、それを表現出来ますか」
「――」
「透明の軌跡」
「恐らく貴方は、記憶を喪ってから、新たな思い出を得たはずです」
「それでも其処に描けない事は」
「貴方のカタルシスは根源から異なる事を意味しています」
「どういうことだ」
「美的判断は概念によって完全に証明できるものではありません」
「私が描いた絵を万人に見せた時、その美しさの証明、提示する事は出来ません」
「それでも、私は『この絵を美しい』と胸を張って豪語するのです」
「貴方はその前提に辿り着く事が出来ておらず」
「傷心している」
「……」
「貴方が思い浮かべたその横道というもの」
「其処に派生する感情に、貴方が自ら名前を付けられないというのであれば」
「それは模倣しようとしているに過ぎず、しきれていない事の裏付けにさえなるのです」
「……」
「それもそのはず」
「貴方が本来、思い浮かべ、描きたいであろう事は」
「『ユンフ』という絵具があり、『アトリ』という表現がなければ出来ない事なのですから」
残酷な提示を、ドルドインは容赦なくつきつける。
彼が表現したかった過去の線。
その横道には生きた走馬灯があり、それでも自分の未来へと進む気概があった、
だが、それをいざ表現しろと言われた時、
彼はその思想をキャンバスに描く事が出来ずにいた。
その思い出に名前を馳せる事も出来ず、ただ歩んだに過ぎない。
そう言いつけるように、ドルドインは真っ新なキャンバスに手を添える。
「彼は多彩な色の混じったが故、透明と成り得た」
「ですが、貴方は灰色に染まった透明」
「それさえ表現する事を恐れている」
「……」
「もう少しお話をしましょうか」
「何のだ」
「ユンフが描いていた芸術についてです」