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―???―
無数に広がるカプセル状の培養技術の装置。
如何にも人体実験を行うような空間。
その狭間に、透明の軌跡は降り立った。
「――転送されたのか?」
「何に反応して……」
「……」
硝子越しに見下ろしたその風景、そしてその光景。
複数の科学者が眠りに堕ちた被検体を前にして、バインダーに固定された資料に筆を奔らせる。
被検体は目を見開き、ゴボゴボと培養液の中で呼吸をしていた。
「おや、廊下の痕跡は見当たらなかったが」
「稀なる客、其れも特色が此処に到達するのは聊か不可解ではあるな」
薄暗い研究室から、声がかかる。
研究員は両手をあげながら、「敵意は無い」と透明の軌跡へと示した。
その気だるげで余裕のある視線は、髪に隠れた右目からも分かるほど、
『野望』というものからかけ離れた怠惰が存在していた。
「どうか俺を捕まえんとする不必要な時間の浪費はしないで欲しい」
「俺はただ拉致され、監禁されし身故に」
「残りの8人の朋さえも忘れ得る時を過ごした憐れな研究員だ」
「……アンタは……」
「アセアという」
「その睨視を此方に突きつけるのはやめてはくれないか」
「過日の時、旧朋でさえ俺をそのような眼で見る事は無かった」
気だるげでありながら、飄々とした表情。
口角を僅かに上げたまま、アセアは透明の軌跡からやや離れた位置の窓に歩んだ。
そうして並列となり、研究所の被検体達へとその小さな瞳を投げやった。
「併して透明の軌跡」
「そなたは伝聞と異なり、聊か怠惰に満ちし風貌だな」
「何故此処に姿を現したのかもわからんが」
「元来の透明の軌跡という概念であれば、この地に足を踏み入れる事は」
「『方向標』なる帰郷の頁に泥を塗るようなもの」
「……アンタもアイツを知っているのか」
「狂逸なことを聞いてくれるな」
「俺個人とそなたの関わりは微塵も無ければ」
「どの世界に於いても、交差する可能性は絶無に等しい」
「どの世界?」