カオスドラマX

Gray Traveller / 733

733
わったん 2026/10/05 (月) 22:10:07 >> 732

―???―

無数に広がるカプセル状の培養技術の装置。
如何にも人体実験を行うような空間。
その狭間に、透明の軌跡は降り立った。

「――転送されたのか?」
「何に反応して……」
「……」

硝子越しに見下ろしたその風景、そしてその光景。
複数の科学者が眠りに堕ちた被検体を前にして、バインダーに固定された資料に筆を奔らせる。
被検体は目を見開き、ゴボゴボと培養液の中で呼吸をしていた。

「おや、廊下の痕跡は見当たらなかったが」
「稀なる客、其れも特色が此処に到達するのは聊か不可解ではあるな」

薄暗い研究室から、声がかかる。
研究員は両手をあげながら、「敵意は無い」と透明の軌跡へと示した。
その気だるげで余裕のある視線は、髪に隠れた右目からも分かるほど、
『野望』というものからかけ離れた怠惰が存在していた。

「どうか俺を捕まえんとする不必要な時間の浪費はしないで欲しい」
「俺はただ拉致され、監禁されし身故に」
「残りの8人の朋さえも忘れ得る時を過ごした憐れな研究員だ」

「……アンタは……」

「アセアという」
「その睨視を此方に突きつけるのはやめてはくれないか」
「過日の時、旧朋でさえ俺をそのような眼で見る事は無かった」

気だるげでありながら、飄々とした表情。
口角を僅かに上げたまま、アセアは透明の軌跡からやや離れた位置の窓に歩んだ。
そうして並列となり、研究所の被検体達へとその小さな瞳を投げやった。

「併して透明の軌跡」
「そなたは伝聞と異なり、聊か怠惰に満ちし風貌だな」
「何故此処に姿を現したのかもわからんが」
「元来の透明の軌跡という概念であれば、この地に足を踏み入れる事は」
「『方向標』なる帰郷の頁に泥を塗るようなもの」

「……アンタもアイツを知っているのか」

「狂逸なことを聞いてくれるな」
「俺個人とそなたの関わりは微塵も無ければ」
「どの世界に於いても、交差する可能性は絶無に等しい」

「どの世界?」

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