カオスドラマX

Gray Traveller / 745

745
わったん 2026/10/18 (日) 20:24:44 >> 744

「……そうか……」
「生きた走馬灯が語った過去の声は、アンタだったのか」

<孤独を埋めてくれる優しさに満たされない人>
<あの人は私の意見を聞いたうえで、その空洞を自ら断った>
<それが、誰も泣かない事だと信じて>
<自分らしく、自分の色を見付けたの>

「……」

<貴方の心は痛そうね>
<だって貴方の境遇は、誰にも理解されず、誰かの価値観を押し付けられたものだから>
<それでも貴方は進んでみようと思ったのでしょ>
<ユンフに憧れたから>

「……」

<でも、その感情に気づいた時はもう遅かったわ>
<ユンフが今まで築いてきた軌跡の延長線を歩いた貴方は>
<彼が決して下さなかった決断を幾つも実行してきた>
<それは『透明の軌跡』が成してきた行路を閉ざす事と一緒>
<彼の物語は、潰えてしまったも同義なの>

「お前が勝手に終わらせていい物語じゃねぇ」
「アイツの描いた軌跡は、必ず届けなくちゃならない」
「俺は、俺が何者でもない事を悟った上で」
「その上で、俺はアイツの物語を届けようと――」

<方法も、結末も、何もかも確立されていない事なのに>
<その不確定要素に取り囲まれた絶望に近しい道程を、貴方は歩めるの?>

「――」

<いい、ユンフ。貴方が歩めなくても、それは誰にも責められることではないわ>
<この都市に蔓延る心の病は、誰しも抱えるもの>
<例え違う世界から飛び出された貴方だとしても、其れは等しく抱えてしまっている病巣>
<救われるべきなのよ、貴方は>

温かい声は、俺を庇うように言葉を繋げ続ける。
心地よい言葉は、耳の中で温度を保ち、心だけではなく、身体そのものに高揚感を齎した。
謳うような、夢でも見るかのような音節。それはまるで、罪を減らしてやろうとする慰めのように聞こえた。
だが、俺はその罪を預けようとは思いたくなかった。
穢してしまった俺の手は、もう二度と綺麗になる事はないけれど、
それでも、あの時見えた少女の笑顔の為に奔走した男の物語を、
俺は拾い上げて届けたかった。

「救われるべきは、俺じゃない」
「この身体の真の持ち主」
「俺は、其処に当てはめられただけの都市の人間の一人に過ぎない」

そう、俺が望むことは――

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