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<それって、貴方がしないといけないことなの?>
――
<例え形は異なれど、今その身体に生きているのは貴方>
<名前も無くて、過去も無くて、答えをずっと探し求めている旅人>
<そんな空っぽな貴方が、ユンフの枠組みに無理やり入る事なんて>
<いずれ摩耗して壊れてしまうだけ>
「それは――」
<視線が怖いのでしょう?>
<ユンフの身体で生きているのに、そうじゃないって言われる視線が>
<最初はその上で生きて往こうと思ったのに>
<今ではユンフの真似事をしてみようとさえ思う>
<いい?それは決して根本の解決にはならない>
<周りに合わせる必要なんてないの>
<自分には自分だけの形があって、私はそれを肯定するだけ>
<耳を傾けた先に、本当の自分が見付けられるの>
声は、恐ろしい程に俺を肯定した。
一つずつ掘り下げてしまえば、いつだってそれはしっかりと絡まり合っていた。
気が付けば、分別さえできない巨大な罪悪感の塊はいつも俺の手に握られていた。
其処には幾つもの都市の思い出があり、俺のものではない暖かい気持ちが籠っていた。
そんな感情を前にして、俺は一度逃げ、その上で再び向き合おうとした。
だが、其処に発生する苦痛を、俺自身も分からないまま喰らい続けていた。
<でも、それだと貴方は結局身体に縛られたまま生きて往くことになってしまう>
<だから私は手助けしたいと思ったのよ>
<貴方がユンフの延長線として生きて往くんじゃなくて>
<『ユンフ』として生きていけるように>
「違う!!!」
「俺は、アイツじゃない!」
「アイツであってはならない!」
<『ユンフ』でいいのよ>
<その上で、貴方は自分らしく生きるの>
<都市が、世界が、故郷が、誰がなんと言おうと>
<貴方の心の形は貴方の望む人生を彩る>
心地よい。
自身でどれだけ否定したとしても、声は俺の心の奥底に潜んでいた欲求を掬い上げる。
中途半端に決めた覚悟は、こうも簡単に瓦解していく。
今、苦痛に歪めた表情も、おそらく俺の反骨が生む虚偽に過ぎない。
それだけ、俺の心は容易く魅了されていく。
声の通りに。
<他の罪に目を向けてはならない>
<貴方を彩る怠惰と向き合った時、其処から初めて進めるの>
光を感じる。
俺を肯定する声は、其処に沈んだ泥沼の感情を剥いでくれて、
心は雪解けのように軽くなっていった。