カオスドラマX

Gray Traveller / 754

754
わったん 2026/10/26 (月) 22:33:39 >> 751

都市におけるユンフの現状。
それを受け止めようと幾度も文字を咀嚼する。
アトリはその快活さを失いながらも、
決して笑みだけは崩さぬようにと、目を伏せた。
その笑みを浮かべるアトリを、青年は変わらぬ憂鬱めいた瞳で見つめ、
何故その笑みを崩さないのか不思議そうにさえした。

「……また、沈んでしまったんだね……」

「何故、そのような哀し気な笑みを浮かべるのでしょうか」
「明るさの象徴ではなく、崩れそうなものを両手で支えるような笑み」

「……笑っておきたいんだ」
「私は、まだ、彼が帰ってくるって」
「信じているから」

「……」

「きっと、きっと」
「ユンフはまだ、戦っているんだと思う」
「私を護る為に、自分の築き上げたものを放り投げてでも」
「私の為という、自分の為に」
「……」

苦痛にさえ感じる虚勢の笑み。
だが、其処には確かに信じる者だけが出来る瞳があり、
絶望に屈しない希望を秘めていた。
彼女もまた、彼女自身の想いを肯定すべく、
彼の帰りを待っている。
そう感じ取った青年は、細めた視線を下ろして目を伏せる。

「彼、優しいんだ」
「何処までも利他的で、自分の幸せなんて二の次にして」
「いつも沈んだ瞳で、平気そうな顔して……」
「人の為に、自分を内包する」
「だから、自分の色を持たなくても、人の思い出に絵具を注ぐの」
「それが、彼だけの持つ焔だったから」

声が弾む。

「……」

「そんな彼がね、私を見て、笑ってくれたんだ」
「笑ってくれるだけじゃない」
「色んな、色んな表情を見せてくれるの」

「……お聞きしても?」

青年に応えるように、アトリは頷く。
胸の奥から一枚ずつ絵を取り出すように、言葉を紡いだ。

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