「どうした? なんかあった?」
「いや……」
僕は、あの光景を彼に話すか迷った。だが、今はそれよりも気になることがある。それは……
「……君は、この白い世界に呼ばれて何をした」
「え? だから世界を救うために力を貸して欲しいって……」
「そうじゃない」
僕は彼を睨むように見る。彼は少したじろいだが、それでも僕から目を逸らそうとはしなかった。
「具体的に何をしたと聞いているんだ」
「それは、君もこの天の声さんに聞いた通りさ。彼が記録《ログ》って呼んでるものを集めて、ここに持ち帰る。あのゲートの先に行って持ち帰ってきた。もっとも、僕は正直、具体的に何を持ち帰ったのかもわかってないけど……この天の声さんは『出来た』って言ってる」
「……つまり、あれらのゲートを潜り記録を持ち帰ることで、この世界は元に戻ると。そして、それをこの天の声は望んでいる」
「あ、ああ。そうなるね」
「ふむ……」
僕は考え込むように腕を組む。
もしそれが真実なら……『元の世界に帰りたいなら頼みを聞いてほしい』と、天の声は一方的な交渉もしてきた。
それほどなりふり構わない様子、この声にとっての深刻な何かであることは間違いないだろう。
怪しい、という感情もないではない。
しかし、今のところこの世界についての手がかりも、帰還の手がかりも、こいつ……いや、この声しか持ってはいない。
となれば……だ。ここは大人しく従い、この世界を救うために動くしかないか?
「わかった。なら僕も協力しよう」
「え?」
「世界を救うんだろう? 僕はそのために呼ばれたんだ。ならそれに従うまでさ」
「……ありがとう!」
彼は嬉しそうに笑った。覆面越しでも伝わるように、マスクの目が変形する。そして僕に手を差し出してきた。握手をしようというのだろう。僕はその手を迷わず握って、彼に言った。
「君も僕を助けてくれ」
「ああ。よろしくね!」
「それと……名前も聞いていいか? もう知らない仲じゃないだろ?」
すると彼はハッとした顔をして、申し訳なさげに頭を掻いた。そして、少し照れくさそうにしながら僕に名乗る。
「……そうだな。僕は……」