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体感時間35年。
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前回からかなり早いスパンで新しい客人が来館した。
その客は軍服を着用したマネキンだった。
保存状態がいいのは必然、衣類には「展示ナンバー」を記す札が取り付けてあることから、
保管される事自体が役割であるマネキンだったのだろう。
重きを置かれているのは、カビが生えてそうなのに無菌状態の軍服の方だろうが。
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「失礼するであります!自分は"故郷"を入棺する任を遂行するべく参上仕った展示ナンバー1927番!村瀬大尉の軍服!! 館長殿におかれましては、この記録の介錯を賜りたく!!」
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余った袖をぶら下げて敬礼し、そのように理解できる言葉ではない音から意を汲む。
実際にはヒューヒューゴーゴーという名窯しがたい風のような何かが鳴っているだけなのだが、なんとなしに言語として認識できた。
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「承知しました。」
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マスターは過不足なくそう答え、村瀬大尉の軍服が差し出した本を受け取る。
表紙には「村瀬大尉帝国大戦手記」と記されている。
相当な年月が経過しているのだろう、既にページが風化しかかっている。
にも関わらず、書籍としてのカタチを維持し、村瀬大尉の軍服が袖で懸命に表紙を押さえつけてもページは閉ざせずにる。
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