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図書館運営始まって以来の大惨事。
この図書館で発生した事柄は一切記録されないという規約があるので、後に~~事件と銘打つ事はない。
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しかし、我という記録し続ける蛾からすればやはり銘打つ価値のある大惨事だったのだろう。
我としてはその解決に一役買った、ということを赤文字で念押しして欲しい。
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いつものルーチンは出だしから崩れていた。
図書館はマスターが眠る前と目覚めた後では様子が大きく異なっていた。
床に散乱する活字、紙片、おがくず。見るも無惨に食い荒らされ、死体を積み上げる書籍達。
これは即ち、世界が眠りを妨げられたばかりか、見るも無惨に食い荒らされ惨殺されたに等しい、
前代未聞の、世界規模の大量虐殺に等しかった。
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マスターは長きに渡るルーチンオンリーのせいで表情筋が麻痺している。
だがコーヒー豆のような円な瞳は、湯どころか火で炙ったかのように憤怒で滾り、
手にしたマグはわかりやすーーーーーくヒビ割れていた。
おお、こういった人間らしいリアクションもするのか……と感心するのも束の間。
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彼女はじっと、というか初めてがっつり我を見つめていた。
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もしかしなくても疑われている。
潔白を証明しなければ……。
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