―――――重金属と化学物質で汚染された、独特で不快な臭いを放つ濁った雨が降り注いでいる。
本来、上層のビルと道路の基礎部分で蓋をされたこの『地の国』地下都市には、雨が降らない。国の中心部にある、上層と繋がる天窓の下以外には。
今私が居る、この下層の僻地で降っているのは、汚染された排水と蒸気が天井に溜まり、それが降雨の様に振り続けているものに過ぎない。
天井の形状も影響して、この一帯は定期的にこんな雨が降る。
汚くて、臭くて、身体に悪い雨。肌に触れれば痺れ、痛む。
そんな雨に紛れ、人目を避けながら、私……『ラウニ・レア・ルオデネン』こと『トルニ』というろくでもない女と、
もう一人の、髪も背も長い女……『ラトニカ』というらしいそいつが、分厚く不格好なレインコート姿で歩いている。
実に嫌な雨だが、叩き付ける様な強烈な勢いが幸いして、響く音が路地を歩く私達の姿と音を上手く掻き消してくれていた。
建物の傍を、路地を、人目を避けながら歩き続け、数台の自動車が傍に停められたモーテルの前で足を止める。
見えるだけでも、壁にはひび割れが入り、割れたまま放置されたガラスまで見える。
余程の事が無ければ、泊まろうとは思わない。そんな、粗末なモーテルだった。
「此処だな……『お姫様』が居るってのは」
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