ブラン000「フフッ…その質問に答えるならば、当たらずとも遠からず…というべきかな。そうだね…まずは簡単に、僕のことを紹介しておこう。」
ブラン000「改めて、僕の名は『ブラン000』。「ヴァナダ」博士に最初に創り出されたアンドロイド個体…正式名称は「VAD-000」。しかし僕は、最初に生み出されこそはしたが起動されることのなかった唯一の個体だ。」
ブラン000「過去に生み出されたアンドロイドたち… MDJ-564「ヴォルキル」、VG-780「ミーラ」、CC-389「マミー」、BCM-456「ヴァンプス」、GPK-008「ミュール」…その他にも、製造された数多くの個体… 過去に生み出され、無事起動を果たしたアンドロイドたちに蓄積されたデータのすべてを取り入れることで、最終にして最高の傑作個体として完全な起動を果たす。」
ブラン000「それが僕だ。僕の存在は、すべてのアンドロイドたちの誕生と活動によって実現した。そして…各個体に様々な機能があるように…僕にも唯一無二の機能が備わっている。」
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ブラン000「それが "世界システム" 。遺伝子構造を組み替える機能(ちから)だ。すべての生き物はDNAという遺伝子によって構成されている。それは僕たちアンドロイドも例外ではない。より人間的な挙動を、感情を、思考を学び、養うために…人間や動物たちと同じ遺伝子が組み込まれている。わずかではあるが血も通っている。」
ブラン000「僕に与えられた機能(ちから)は…この手で触れた生命の遺伝子構造を組み替えることができる。体内の遺伝子の成長速度を操作することで…他者の回復や強化を図ることは勿論、遺伝子を破壊することでその生命活動を停止させることだって可能なんだ。」
サユリ「そんなことが……!……なるほど……だからあの時…不死の存在であるはずのアマルガムが突然消滅したのも…あの怪物の遺伝子構造の仕組みを瞬時に組み替え、不死にも近い生命力を一瞬で相殺した…ということのね……」
ブラン000「ええ、その通り。」
エルナ「ふぅーん……なんだかすごい能力を持っているみたいだけど…妙だねぇ…?あなたがここの現在の管理者だとして、なぜあんな化け物を今日まで野放しにしていたわけ?そのお得意の能力をもってすればとっくに始末できていたものの…」
ブラン000「確かに、アマルガムの処理は造作もないことだ。けどそれは僕の…いや、この言い方では語弊がある。「博士」の意思に反する行為だからだ。」
サトミ「どういうこと…ですか……?(話を聞きながら、促された紅茶に手を伸ばして温かいうちに口にする)」
ブラン000「僕の使命は、博士の意思を引き継ぐこと。もともと僕が最後に起動されるのは、博士自身がその死後を考えたが故だ。自分が消えても…カンパニーを存続させ、研究を続行するために。いわば僕は、博士の分身でもあり、代行者ともいえる。」
ブラン000「山本さん、あなたは博士から直接託されたはずだ。「来る日」がやってくるその日まで、決してこの地下へのゲートを開くなと…。博士はすでに予見していたのです。
誰かが…そう…それもカンパニーや博士にとって最も信頼における誰かが、この会社の闇と向き合うことになるのを。たとえそれが「家族」であったとしても。」
ブラン000「だからこそ、博士は真摯に受け止めてほしかったのです。自分の非を…科学の罪を…現実は決して綺麗ごとでは済まないということを。博士は…あなたたちに気づいてほしかった。ゆえに、アマルガムという負の遺産をあえて残すことを、僕が選択した。それが博士の意に沿うことだと判断してね。」
ブラン000「そして君たちは…その闇を、越えられない壁に立ち向かおうとした。たとえ相手が不死身の存在だとしても、それでも振り返らず、突き進み続けることを選択した。その意思をくみ取り…初めて僕が動き出したんだ。今の君たちになら、すべてを話しても良いとね。」
ブラン000「……君たちがここに来た理由は知っている。地上で起きていることも、すべてこのラボで監視していた。もっとも…博士の死後、僕はここでずっと君たち吉岡家の動向をずっと監視していたのだけど。それが博士が僕に課したプログラムの一つでもあったからね。」
ブラン000「……お兄さんを…「キルビス」くんを救いに来たのだろう。そのための手段も、計画(プラン)も…既にこちらで用意している。君たちの意思一つですぐにでも救出しに行かせることができる。」
ブラン000「……………………(しかし青年は白衣に手を入れたまま無言する。躊躇う素振りではないが、潔く次の言の葉を淡々と紡ぐわけでもない、形容しがたい表情だけを浮かべて―――)」
ブラン000「………だけどその前に……もう一つだけ、確かめておかなければならないことがある。今度は「アキラ」ちゃん……君自身に対してだ。」