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"マースレニツァ''
ロシア語でバターの祭典を意味するこの催しは、古くから行われているロシア正教の祭典行事の1つであり、''冬送り''の祭りとしても知られています。
西方諸国の教会にて行われている''謝肉祭''に近しいものと言えばわかりやすいでしょうか?
「華やかなものですね。本来の宗教行事が形骸化し、イベントとしての様相が強まった結果なのでしょうか?」
「元から春の訪れを祝う祭典でもありますからね」
そういうものなのかもしれません。それはそうと、吸血鬼が教会の祭典に堂々と参加している様子は、何とも違和感のあるものですが。
やはり、吸血鬼が''神へ敵対する不浄なものである''という概念はどこかのタイミングで教会がイメージ付けたものなのかもしれません。
となると、伝承でよく謳われる白木の杭や十字架、聖銀が効くかどうかも正直眉唾ものといったところですね。
これまでの人ならざる者達と同様に、''単なる種の一種''としてみなすべきでしょう。
もしくは銀そのものが''たまたま吸血鬼''の弱点であったために、伝承のいうところの''怪物''の類に特攻があると信じられているのかもしれません。現に恐らく、人狼の類であろうジン・ツキヨ氏についても''銀が弱点である''などといった情報は入っておりません。
しかし...、かの大戦期に記録された資料によれば''銀は人狼の弱点であった''との記述もありますが...。
まぁ、いずれの場合であったとしても...。
(直接、メスを入れてみなければ詳しいことは分かりませんね)
やはり、''人ならざる者''という存在は私の興味を引き付けて離しません。実に興味深いものです。
「あそこにブリヌイの屋台がありますよ」
「ブリヌイですか」
確か、薄い生地を幾重にも重ねた''硬く焼き上げないパイ生地''もしくは''クレープ生地で作ったパンケーキ''のようなものでしたか?
「そろそろお昼時ですし、折角なので買っていきましょうか」
食事が不要となって久しいですが、私は他の私達と違います。
味は...、良くも悪くも食事のベースといったところでしょうか。付け合せのソースや果物の味を良く引き立てています。
「気に入りました?」
「ええ。私の国にはあまりない味です」
そういえば普通に食事を行うことができるのですね。我が国に保管されている吸血鬼に関する資料には食事事情にまで言及はされておりませんでしたが...。