■ ■ ■ ■ ■
「──────それで、アレが最終日に燃やすためのカカシです」
十字架にかけられたようにも見える一体のカカシ。その様は罪を犯し、これから刑にかけられる罪人。もしくは...。
「その年の厄だったり、自分の分の罪だったりをカカシと一緒に燃やして冬を見送り、新しい春を迎えるためのものです」
"身代わり''でしょうか。
「最終日には他に特別なイベントが?」
「"赦しの主日''というものがありますね。その年に犯した罪を親しい人に打ち明けて互いを赦しあうといったものです」
罪の意識──────ですか。
(私は、''罪の意識を感じないように''造られています)
善悪の判断は知識として持ち合わせておりますし、被検体となる方々へ対して敬意の念を忘れたことは一度たりとてございませんが...。
("彼女''はどうだったのでしょう)
■ ■ ■ ■ ■
──────は自己表現が苦手な子でして。それでも彼女には理解してくれるお友達がいます」
シコルスキーさんの行きつけだという飲食店にて注文した料理を待つ間、私の運営する施設での話を持ち出してみましたが、概ね他者理解・共感といった部分については人類と同じと言ったところでしょうか?
(シナノさん、ジン・ツキヨ氏に関するデータが不足していることを踏まえると、比較対象がルェンさんのみとなる点が問題ではありますが)
しかしそれだけで、彼女の感性が人類寄りであると結論づけるには少々早計かもしれません。
例えば彼女に大切なものがあるとして。その大切が彼女にとって''隣人として大切である''とは限りません。
(単なる''所有物''とみなしているという可能性も捨てきれません。ですが...)
もし、その''大切''を彼女自身の目の前で傷つけたら?奪ったら?
どのようなデータを得ることができるのでしょうか?
何を知ることができるのでしょうか?
(何を試すにしても、現状データが不足しているという事実に変わりはありませんが)
「私ばかり話しているのもなんです──────
貴女の事を教えていただけませんか?」