「10時方向に
「了解! 撃て!」
それを聞いて、、砲手が88mm砲をソ連軍めがけて撃ち込んだ。
また1門Zisをやったな。
そう思いながら、操縦手は配備されたばかりの新鋭戦車を軽々と扱っていた。
…全く、ポルシェもすごい車両を作りやがる。
見た目は今までと変わらないのに、こんなに早く動くなんてな。
VK4501(P)、通称ポルシェティーガー。
電気駆動によって中戦車と変わらない機動力を有した重戦車であり、
後世の歴史家から「早すぎた主力戦車」とまで呼ばれた車両である。
「9時方向にPAK,弾種榴弾! 撃て!」
そう言うたびに一斉に対戦車砲が吹き飛んでいく。
そのま、ま矢じりはソ連軍陣地へと突き刺さっていった。
6日には赤軍も第2戦車軍に第19戦車軍団ら増援を加えて反撃し、大規模な戦車戦が勃発。
ポルシェティーガー戦車の威力は絶大で、赤軍先鋒の第107戦車旅団は
わずか数分で戦車50両中46両を喪い後退した。
「前方にT-34! 一体何両いるんだよ!?」
「黙れ! いいから撃ち続けるんだ!」
次の瞬間、88mm砲が一斉に咆哮し前方のKV-1やT-34/76がまとめて爆発した。
ソ連軍の1個旅団がたちまちスクラップになっていき、
焼け焦げた車体と吹き飛んだ砲塔が辺りに散らばっていく。
「まるでびっくり箱だな。凄い光景だ」
「前方にKV! 撃て!」
バルバロッサ作戦の時はあれほど強かったKV重戦車が、
いまや一発で無力化できるほど弱体化していた。
88mmが命中し、弾薬庫に誘爆し、砲塔が吹き飛ぶ。
もしもこの光景を1941年に見たとしても、
とても信じられなかっただろう。
そう思いながら、装填手は再び徹甲弾を装填した。
7日未明には、攻撃の主軸をオボヤンとプロホロフカ方面に指向したため、
ソ連軍はその方面の前線を受け持つ第6親衛軍と第1戦車軍に、
待機させていた方面軍予備兵力の投入を開始した。
同日にドイツ軍は攻撃の主軸を鉄道線上のポヌイリ市に変更して攻撃を再開。
第18装甲師団の支援を受けた2個歩兵師団が「第二のヴェルダン」と呼ばれる激戦を繰り広げ、
8日夜には市の大半を占領する事となる。
続く…