うんぜあ がんつぇ りーべ でん らんと!!(アルゴン)
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2025/05/05 (月) 12:28:17
「先行する第42号艦より入電。『ア式座標法 2 6 24の地点にて、フリゲート2、輸送船3の船団を発見』とのことです。今回は護衛付きの船団のようですし見送りますか?」
その言葉に対し、このシュティッヘン級攻撃型原子力潜水艦『4番艦 アルケー』の艦長。アルフレート・アーデルベルクは静かに首を振る。
「いや、本国からの命令では''護衛付きのものも月ごとに定数沈めよ''との事だ。少々リスクは付きまとうがやむを得ん。先行艦と情報を共有し、輸送船団の針路を割り出せ。先回りし、待ち伏せの上攻撃を仕掛ける。深度80まで潜航の後、通信用ブイを用意しろ」
■ ■ ■ ■ ■
「あれか...。頭と尻を護衛に挟ませる典型的な布陣だな」
観測用のブイから送信された情報を精査しながら状況確認に務めていた。
「深度10まで浮上、磁気推進器の推力を0に落とせ。ここからは海流の流れと慣性で接近する。有効射程距離まで接近の後、跳躍魚雷4、高速魚雷6を発射。攻撃の後、深度100まで潜航し離脱する」
アルケーはゆるやかに上昇を始める。機関の音はほとんど消え、艦内に漂うのは冷気と緊張だけ。
「陣形に変化なし。まだ敵は気付いていないようです」
ソナー担当の声に艦長はうなずいた。
「よし、もう少しだ。今は息を殺せ。無音航行を徹底しろ」
海流に乗り、アルケーはまるで海の亡霊のように輸送船団へと忍び寄る。敵のフリゲートは前後に分かれて航行中で、対潜哨戒の動きも今のところ見られない。狙うなら今しかない。
「射程内に突入。敵前衛フリゲートと第1輸送船との距離はおよそ700。後衛フリゲートと第3輸送船の距離はおよそ800」
艦長は瞼を閉じ、一瞬だけ深呼吸した。
「撃て」
通報 ...
注水を終えた魚雷発射管から立て続けに跳躍魚雷、高速魚雷が吐き出される。跳躍魚雷は発射管を離れると深度を一気に上げ、水面へ勢いよく飛び出し水上を滑走するようにして護衛艦を目指す。高速魚雷はそのまままっすぐ輸送船に向かって突き進んだ。
一瞬の沈黙。しかしそれは実際の時間以上のものとして感じられた。
そして...。
「艦体破壊音確認、数は2...。続けて3」
魚雷の直撃を確認しブリッジの空気が少し緩んだ。
「よし、予定通り待避行動を...」
しかし次の瞬間、ソナー担当から上げられた報告にブリッジの空気が再び凍りつく。
「スクリュー音...。後衛フリゲート健在。ソナーにアクティブ音を確認。 攻撃を探知された模様」
「上部推進器出力最大。深度100へ向け急速潜航。アクティブソナーに対してデコイ展開」
艦内が一気に戦闘モードに移行する。アーデルベルク艦長はアームレストを握りしめる。
「追撃があるかもしれん。魚雷発射管、再装填を急げ。深海へ逃げ込むぞ。作戦はまだ終わっていない」
■ ■ ■ ■ ■
「ソナーより報告、こちらへアクティブソナー音の確認。敵、こちらの位置を特定しつつあります」
「被雷艦も沈んでいない」
副長の報告に、艦長アーデルベルクは即座に判断を下す。
「第二波の魚雷装填は中止。デコイ増設、対雷撃用クラスター弾の用意を。敵の攻撃に備えろ。速力50、全速力でこの海域から離脱するぞ」
艦が急速に沈んでいくなか、艦側面に配置された2基の磁気推進器が唸りを上げる。
そのとき、ソナー担当は起こりうる最悪の事態を察知した。
「着水音確認。敵フリゲートより追撃魚雷。数は2、7時の方向。続けて2、同じく7時の方向」
「回避運動。左舷推進器出力80%へ。続けて右舷バラストタンク第1、第4をブロー。浮力操作で体制を整えろ」
艦がぎりぎりの軌道を描いて海中を滑る。魚雷の航跡は刻一刻と迫り...。
「第1弾、通過を確認」
「第2弾、通過を確認」
初撃の2発はそれぞれ艦の上方を通過し水底の彼方へと消えていった。
「第3、第4...。避けきれません!!」
「対雷撃用クラスター魚雷発射」
艦側面に設けられた発射管より4発の魚雷が放たれる。それはしばらく直進した後に、先端部のロックが解除される。解き放たれた無数の弾頭がCO2ガスを噴射しながら四方八方へと拡散していった。
「敵魚雷全弾迎撃を確認」
「損傷報告を。ソナー、敵の動きはどうだ?」
「損傷軽微、異常なし」
「フリゲート2、索敵続行中ですが、こちらの正確な位置は見失った模様」
アーデルベルク艦長は鋭く息を吐く。
「...敵の対応、想像以上だな。だが、これで充分だ。あとは影に紛れて消えるのみ。速力を落とせ。静音航行で離脱する」
海の闇へと再び姿を溶かしていくアルケー。その背後には、混乱と炎に包まれた輸送船団、そして執拗に探知を続ける2隻のフリゲートが残されていた。
■ ■ ■ ■ ■
『NEWS映像』
欧州ネットNEWS 海洋貿易路で大型船団襲撃 死者多数
『本日午前6時、セネガル付近の公海上にて、3隻の支援物資を積載した輸送船が不明戦力による攻撃を受け、2隻が完全に沈没、1隻が大破。護衛のフリゲート艦2隻も損傷を受けたとのことです』
『軍広報部は「不審な潜水艦による攻撃の可能性が高い」と発表、正体不明の艦艇が軍製の魚雷を組み合わせた精密攻撃を行ったとしています』
『現在、複数の関係国が合同で調査に乗り出しており、攻撃を行った潜水艦の所属・意図については「調査中」とのことです』
映像:炎上する輸送船
『専門家は「少なくとも辺境のテロリストに用意することの出来る規模を超えている。第三国による計画的攻撃の可能性もある」と指摘。情勢の不安定化を懸念する声も』
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その報道を、アルフレート・アーデルベルクは艦内の通信室にある小型モニター越しに無言で眺めていた。
「どこの国の潜水艦か、だと?」
副長が皮肉げに笑う。
「まあ、わかるわけがない。アルケーは文字通り''存在しない艦''だからな」
艦長はそれに答えず、ただ静かにモニターのスイッチを切った。
「補給品目と作戦記録を暗号化して送信。次の命令が来るまでは、深海層で潜伏待機だ」
「了解。やはり、この程度で終わりませんかね?」
「終わるものか。この戦いはまだ始まったばかりだ」
・第42号艦:既存潜水艦に偽装パッケージを被せたもの。
・跳躍魚雷:軽く速く作られた海面滑走型の魚雷。炸薬が少なかったり、喫水より上に命中したりと威力はしょぼい。足止め用
・何故、フリゲートを沈めなかったのか?:一応、可潜巡洋艦並の火力はあるので撃沈はできるものの、長期任務で弾薬消費を絞る必要がある上に、あくまで目標は輸送船の破壊なので今回は逃げに徹しました()
みなさーん始まりますよー(白目)
もう助からないゾ♡()