アグレッサー部隊の塗装を施した1機のS-25と4機のS-35が、
曲技飛行隊のそれを超えるレベルの
完璧な編隊飛行を行いながら上空を通り過ぎていく。
「…なんだありゃ?」
垂直尾翼には、吹雪の中を飛ぶ隼のマークが書きこまれている。
どこかで見たような気がするが…
何なのか全く思い出せない。
「おい、何やってるんだ!」
声のした方向を見ると、
短機関銃と防弾チョッキでフル武装した人員を乗せたジープが
こちらに向かって走って来ていた。
多分彼女の護衛兵だろう。
…そろそろ戻らないと不味そうだな。
「じゃ、また」
そう言って、彼は再び職場へと戻っていった。
「さよーならー」
彼女はそれを見送ると―
先ほどやってきた兵士たちに振り向いた。
「えーっと… 何の用ですか?」
彼はこの男たちを護衛兵だと思っていたが…
実際には全く違っていた。
「…チェコ空軍の者だ」
「え? どうして軍の人が?」
「うちの飛行隊との演習に付き合ってもらうだけだ。
安心しろ、数十分で終わる」
ミラン・ヴォカールが研究所に戻ると、
同僚のシルヴェストル・ドピタが興奮した様子で話しかけてきた。
目を輝かせ、片手には雑誌を抱えている。
「おい! すげぇのが来たぜ!」
「なんだよシルヴェストル、そんなに興奮して。
彼女ならもう数日前に来てるぜ」
全く… いったい何を見たんだ、コイツは?
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