そんな彼女を落ち着かせるように、
彼は笑顔で言った。
「…どうしても飛びたいというなら、
私を撃ち落としてみろ。
ああ、もちろん演習での話だが」
「…いいんですか?」
それを聞いて、彼はすぐさまテーブルの上に置いていた
パイロットヘルメットを持って
部屋の外へと出ていった。
「行くぞ、弟子ども。仕事だ」
その時、彼― マルツェル・クバーセクは、
かなり簡単な仕事になるだろうと思っていた。
なにせ、相手は実戦経験もない新人なのだ。
…だが20分後、彼はあと一歩のところまで追い込まれていた。
(馬鹿な)
最高クラスの練度を持っていた僚機達は、
全員が意気揚々とドッグファイトで突っ込んでいった。
…それが間違いだった。
重力を無視したかのような敵機の機動に
僚機は善戦したものの次々に撃墜されていき、
今や飛んでいるのはマルツェルとラトカのたった2機だけだった。
ヘッドオンしているため、ブーメランを2枚重ねたような
彼女が乗っている機体のシルエットがはっきりと分かる。
「ミサイル、ミサイル―」
機体に搭載されている警報装置が鳴り響くと同時に、
両者の機体は猛スピードで交差した。
直後に両者とも撃墜判定を食らう。
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