「カチッ」
乾いた金属音が足元から響いた瞬間、世界が止まった。
0.4秒後、PMN-2地雷が破裂する。
爆風と共に足首から下が消し飛んだ。
皮膚は裂け、筋繊維が捻れ、骨が砕けて散った。
スネの骨は白濁した破片になって肉と一緒に空中に舞い、脛の皮膚は靴の中に残ったまま、
焼け焦げた肉の断面からは泡立つような血液が断続的に吐き出される。
彼は悲鳴を上げようとしたが、肺が圧迫され、喉から出たのは犬の鳴き声に似た喘鳴だった。
「あ゛っ…ぅう゛…っっあ”あ”あ”あ”あ”ァ!!」
倒れた地面は赤く染まり、泥と血が混ざり、粘性の高い肉のスープのように変わる。
両手で膝下の“あった場所”を押さえるが、指が皮膚の下にずぶりと入る。
圧力で裂けかけた皮膚が破れ、筋肉の繊維がピロピロと音を立てて指に絡まる。
「どこだ!?どこが痛ぇ!?おい!どこがっ!!」
駆け寄ってきた仲間が叫ぶ。
彼は答えられない。
口を開けば断末魔の咆哮と嘔吐物と、舌の一部が同時に飛び出るから。
右目は爆風で硝子体が飛び出し、視神経が頬まで垂れている。
残った左目で彼は自分の脚を見てしまう――骨だけが刺さったような断面。
その中心に、まるで溶けたチーズのような筋組織がぶら下がっている。
助けようとする兵士の手に、自分の内臓の一部が貼り付いた。
爆風で腸が肛門から押し出されていたのだ。
細長く伸びた腸が、まるで蛇のように泥を這っている。
自分の体の中にあったそれを見た瞬間、彼は嗚咽し、自分の舌を噛み千切った。
「モルヒネッ!!早く!!早くッ!!!」
手当ては遅かった。
鼓動に合わせて吹き出していた血は、もはや泥と区別がつかない赤黒さになっていた。
目が見開かれたまま、彼の口がパクパクと動く。
声は出ない。肺が破れている。
「……こわい……」
最後の言葉は、声帯が崩れてもなお、口の動きで読み取れるものだった。
そう呟いた数秒後、彼の身体はけいれんを止めた。
片脚が無くなった兵士の死体は、血と泥に埋もれた戦場の片隅で、“肉の塊”に戻った。
ああ...なんて良い描写なのでしょうか...(恍惚)