「おい、残存機は何機だ?」
「スコール3がやられた。そっちはどうだ」
「こっちは7と8が落ちてる。
とんでもないパイロットだな」
もはや最初の勢いはなく、
全員が疲労困憊の状態で飛んでいた。
「あー… とにかく滑走路に戻るぞ。
詳しい話は後でする事にしよう」
「ああ、そうだな…」
研究所に戻るために滑走路を歩いていると、
また彼女と会った。
とてもあのような動きができるパイロットとは思えないが、
世の中には十人中十人がただの初老の男と思う見た目なのに
空軍一の精鋭兵という老人もいる。
ま、何が起きてもおかしくないだろう。
「あ、フランチシェクさん」
「よくやったな嬢ちゃん。
エースパイロットだって夢じゃないぜ」
「いや、そう言うのは辞めときます。私には別の夢がありますし」
「そうか。将来は何になりたいんだ?」
「ドクターヘリのパイロット。
みんなの役に立てる仕事でしょ?」
なぜかその言葉に妙な違和感があった。
…どうしてみんなの役に立ちたいのに、
こんな最新鋭の戦闘機のテストをやっているんだ、と。
「…ああ、そうだな。いい夢だ」
「じゃ、また」
そう言って、また来た時のように反対側へと歩いていく。
後ろから彼女と研究者の一人が話す声が聞こえた。
「やあ、マトウショヴァー君。
機体は思うように動かせたかい?」
「もちろん!」
「そうか。またどれぐらいの連続使用に耐えうるかも調べんとな…」
その時足が自然と止まり、
彼女の話にふと耳を傾けたくなった。
精鋭パイロットとしての勘だったのかもしれない。
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