「結局、この訓練って反射神経を鍛えるための物なんですよね?」
「ああそうだ。データも取れるし一石二鳥だよ。
君にはいつも助けさせられてもらってる」
「えへへ、褒められちゃった。
…それで、結局この研究って何の為に使われるんでしたっけ?」
「未整備の滑走路でも短距離離着陸が可能な、
新型の複翼救急航空機だ。
これを実用化できたら、離島にいる急病人も助けられるだろう」
「じゃあ、もっと頑張ります!」
…ああ、畜生、何だって?
そのあまりに突飛で悪意を伴う嘘を聞いて、
色々と思考を巡らせながら数分間その場に立ち尽くしていた。
「おい、アンタら一体何やってたんだ!?」
そんな中で、一人の男が全速力で走ってやって来た。
彼も白衣を着ているので、おそらくここの科学者の一人だろう。
「フランチシェク・グロシェクだ。アンタは?」
「ミラン・ヴォカール…ここの研究者だ」
息切れしながら、そう彼は言った。
「で、何をやってたんだ?」
「空戦演習だ。 それももっとも愚かな目的の為のな」
「畜生、やっぱりか…
もう既に分かっていそうだが、とりあえず言っておく。
彼女はあれをただの練習だと思ってるよ」
「…ああ、そうか。
で、そんなことを伝えて一体俺に何をしてほしいんだ?」
「彼女はあれが人殺しの兵器だってことを知らないし、
俺は知ってほしくもない」
そこで言葉を区切ると、彼は一呼吸してまた言った。
「止めて見せるさ… 何としてでも」
幸いにも、ここに良心がある人物は少なからずいたようだ。
後で元帥にも教えておこう。
「…なら助言だ」
その発言を聞いて、息切れを起こして地面に顔を向けていた
彼が視線をこちらに向ける。
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