唖然とする隊員達の視界の横から煙の線が見えた。20発を超えるミサイル、島司令部基地の方向から化け物へ向かって一直線に突き進む。
化け物は回避行動を取ることもなく空を悠々と進み、ミサイルの全てが巨体へと命中する。
爆光、更に爆発の光が次々と。
だが、次の瞬間、煙の中から浮かび上がった輪郭は、損傷していなかった。
むしろ――ミサイルの衝撃を吸収するかのように、皮膚が液体のように波打っていた。
そして、生物は静かに回頭した。
その“顔”が、ミサイル発射が向かってきた先へと向けられる。
空が割れた。
生物の額にあたる部位が、淡く脈打つ。青白い光が、まるで深海の生物の発光器官のように明滅し、やがてそれは、一点に集中して収束していった。
「な、何が起こって!?」
誰かがそう叫ぶより早く、光が溢れた。
轟音はなかった。一瞬、世界が静止した。全ての音が消え、空気すら振動を止めた。
そして、閃光だけが存在した。
それは「ビーム」と呼ぶにはあまりに異質だった。直線ではなく、微かに揺らぎ、滲み、ねじれながら前方へと突き進む純粋なエネルギーの奔流。色は青白く、縁に紫が混じり、波のように脈動していた。
閃光の先は司令部のあった場所に大きな爆発をもたらし、衝撃波が海上を走る。
生物はゆっくりとひれをたたみ、静かに沈みはじめた。
まるで、何もなかったかのように。
長い悪夢の始まりだった。
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