「...今、噛みませんでしたよね?」
ミーナは一瞬だけ首をかしげると、当然のように答えた。
「ええ。それが何か?」
「何かって...」
なんかもうこっちが間違ってるみたいな言い方だ。
「丸呑みするには結構大きめの塊でしたけど?丸ごといくの危なくないですか?」
「特にそういったことを意識したことはありませんね。この20年ほどの間、ほとんど食事を摂ること
がなかったので、咀嚼の方法自体既に忘れてしまったということも要因として挙げられますが...」
「いや、やめてくださいそういう情報」
私はナポリタンを皿に置いたまま、軽く額を押さえた。
(無理。ほんとうに無理)
生理的嫌悪とか、倫理的問題とか、そういう以前の問題でこの人?の思考回路が理解できない。
「あなた...、やっぱりちょっとおかしいですよ」
口角を下げたまま、私はぼそりと悪態をついた。
「ですが美味しいですよ。エオローネが''最後に食べたい''と選んだ味です。ありがたいことです」
(そういうことを、満面の笑顔で言うのが一番怖いって気づいてほしい)
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