直後、男がコートの中から爆薬の起爆スイッチを取り出した。
「レグロ区長、退避を!」
護衛が拳銃を取りして発砲するが、
その時にはすでに遅かった。
大爆発が起こり、目の前が閃光に包まれる。
…裏切りやがったな。
それが海南の頂点に一日だけ上り詰めた男―
レグロ・カンティロが、最後に思った事だった。
一方その頃、チェコ政府内部は混乱の渦に巻き込まれていた。
情報が錯綜し、職員が走り回り、ありとあらゆる通信が飛び交う。
実に混沌とした状況だった。
「BISから報告!
記者会見の会場で爆発が起こりました!」
「現場はどうなってるんだ! 状況を報告しろ!」
「主要メンバーは全員死亡。
それから、記者の方も数名が死傷したようです」
「畜生… 海南武警は何をしてたんだ!?」
「それが―」
「早く言え!」
「…その海南武警が、どうやらクーデターを起こしたらしく」
「そんな馬鹿なことがあるか!
おい、テレビはどうなってるんだ!?」
「見れませんよ」
「…何?」
「先ほど、全ての海南向けテレビが
一斉に戒厳令を発しました。
ずっと静止画のままです」
「畜生!」
話を15分前に戻そう。
その時、テレビ局に向けて海南武警所属の
二両の装甲兵員輸送車と
一両の歩兵戦闘車が前進していた。
「何だありゃ?」
「さあ? テレビの撮影じゃねぇのか」
その異質な光景に市民達は驚いていたが、
それは各々に勝手な解釈をさせて
無理矢理納得させる時間を作り出したに過ぎなかった。
通報 ...