Ouroboros
これは…現在行っているコンゴ戦争の水面下で動き出した物語
〜〜〜
「ハァ…ハァ…クソ…クソッ!!」
熱帯雨林を駆ける1人の武装した男、服装からして何処かの正規の軍人のようなしっかりとした装備でもゲリラのような貧弱そうな装備でも無い…PMCだ。
「何なんだよ!クソッ!!何が起きてんだよ!!」
ゲリラの掃討、今までに受けていた中で比較的簡単な任務のはずだった。
目論見通り、自分達のWBF財団の部隊は対した被害も無く任務を完遂…するはずが突如として謎の部隊の襲撃を受けたのだ。待ちわびていたかのような最悪のタイミングで。
「い、嫌だ…死にたくねぇ!! そんなの嫌だ!!」
迫りくるは死の恐怖、吹きかけられるは死神の吐息。
“パシュ”
消音器によりくぐもった銃声。放たれた銃弾が男の左太腿に突き刺さる。
「ぐぅううううう…ああ あ"あ"あ”あ”!!…いっでえ…」
急激に襲う左足の痛みに耐えきれず地面を転がる。叫ばなかっただけ及第点と言えようか。
しかし、距離を稼がねばいけない。這いずりながら必死に必死に逃れ…
“ゾクリ”と急な悪寒を覚えて彼は振り返る…50〜100m辺りだろうか、5〜6人の人影が立っていたのが見えた。
「う…ああ…畜生、ぢくしょぉ….」
逃げる事は不可能に近い。もう補足されている。逃げる事が出来ないなら…
右手を腰のホルスターに伸ばし、ハンドガンを引き抜く。せめて、あの中の1人だけでも殺して…!?
“パシュ” ”パシュ" “パシュ"
放たれたのは先程と同じ音色の三重奏。右手、左手そして右太腿に着弾し、肉と戦闘意欲を抉る。
「ぎいやぁぁああ”あ”あ”あ”!?!?」
こればかりは、声を出すことによる痛みを逃がす他なく、一瞬で四肢を動かせなくなってしまった。
これを機に人影がだんだんと迫ってくる。彼らは全員黒いアーマーを身にまとったのっぺらぼうのような姿をしている。
そんな奴らに…取り囲まれてしまった。
「何者なんだ…お前ら…?」
掠れた声で呼びかける。黒いのっぺらぼう集団は先頭にいた1人に向けて視線を集中させる…コイツがリーダーのようだ。
「…話す必要性は無い。」
冷淡にそう彼ら答える。
「数十分泳がせたが、特に近くに財団関連の部隊は無さそうだ…用済みだな。」
"スッ"と銃口が向けられる。
「ちょっと待ってくれ!!何が目的だ!?財団が狙いならもう既に解体されて構成員は解体済みだ!」
もう既に待つのは死のみ、命乞いをするしか男に選択肢は無い。
「知りたい情報があるなら教えてくれ!何でも答えるから!!だから命ばかりは助けt」
“パシュ”
5度目の銃声は男の眉間を撃ち抜き、彼の生涯に幕を閉ざす。
「言ったはずだ、話す必要は無いと。」
〜〜〜
部隊は死体の処理を終え、要請したヘリが来るのを待っている所である。
「死ぬのが分かっているのなら多少話しても良かったのでは無いのか?”ウロボロス1"」
ウロボロス1と呼ばれた男は隊員に振り返って答える。
ウロボロス1「それは出来かねる。奴の通信機を介して情報が漏れる危険性もあったのだからな。」
情報漏洩が1番駄目なパターンだ。なぜなら我々は「メアリー・スーの怪物」…対人外用に用意された部隊なのだから。
ウロボロス1「今の我々の任務は”メアリー・スーの怪物”を有する財団の構成員の排除。それに今の我々の情報は隠蔽されている。分かるだろ?”ウロボロス2”」
ウロボロス2「…そうだな…軽率だった。」
ウロボロス1「分かれば良い。しかし…ようやく”お鉢”が回ってきた。」
ウロボロス2「ああ、そうだな。しかし、WBF財団が解体されたのに関わらず勝ち目は無いな。」
ウロボロス1「奴は別次元から何かしらの干渉を受けている。ちょっとやそっとじゃ倒せないからこそまずは地道に周りから削って行くしか無い。」
“メアリー・スーの怪物"、これはファントムの人外レッドリストに該当する人物につけられる名前である。
元ネタはSCP日本支部が有するあるScipに付けられた名前であり、この名前自体、付けられた人外に対する皮肉と蔑称を兼ねている。
ウロボロス1「かつての台湾事変では、少数ながらもほぼ個人で複数の国家と戦いながら引き分けに持ち込んだ者だ。強運というよりも何かしらの”運”が作用しているとしか言えない。」
ウロボロス2「それに別人格を有し、平和を謳う組織にいながら殺人を楽しむ多重人格破綻者。力は強いが精神的に未熟で中身が伴ってない故、なおさら野放しにしてはおけない。」
ウロボロス1「そうだ。制御出来ないからこそ彼の外堀を埋めて追い込み、いずれ排除する。」
そう言う彼らにローター音が近づいて来る。
「ヘリが来たぞ」
他の隊員に促され、ヘリに続々と乗り込み始める。
ウロボロス1「さて…今まで散々好き放題してきたツケを払って貰おうか?」
こうして彼らは水面下で財団を狩り続ける。