その武装闘争の間接的な原因―
海南島政府の「元」長官であったアントニンは、
今や海南島における大首相を名乗って議会に返り咲いていた。
「アントニン大首相万歳!」
「海南島救国政府万歳!」
数日前とは打って変わり、議会のどの席も狂ったように彼を褒め称えていた。
ひたすら、延々と、変わりなく。
しかしその一方で、彼は全く嬉しくはなかった。
海南救国政府の指導者になる事すら、
全ては彼の合意なしに行われた。
…あくまで奴らの歓声は表面上だけだ。
戦局が悪化すればすぐに責任を取らされる。
そう彼は思っていたが、そんなことを言える気にはなれなかった。
奴らの傀儡になるほど愚かではないが、
躊躇なくそれを言えるほど勇敢でもないのである。
彼は砂上の楼閣の上に立ち尽くしていた。
その光景を中継で見ていたもうひとりの長官である
海南武警総司令官の林春寧は、
アントニンを笑うのでも哀れむのでもなく、
ただこの男を眺めながら酒を飲んでいた。
「戦況はどうだ」
彼がそう冷たい声で言うと、
一人の部下が震える声で報告した。
「依然としてチェコの奴らは追い出せていませんが、
こちらの優勢は保てています。
あと数日もあれば追い出せるかと」
「そうか」
そのたった一言の言葉を聞いて周りにいた部下は安堵し―
「数日前から同じ内容を聞いているのに、
なぜ一向に海口は一向に陥落しないのだ?」
次に発されたその先程よりもはるかに冷たい声を聞き、
空気もろとも一斉に凍り付いた。
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